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大人の発達障害の僕が考える「女性の発達障害」について

僕はミドル層の男性発達障害当事者として記事を書いていますが、今回は「女性の発達障害」という異なる視点から考えてみたいと思います。

僕が働く就労支援事業所でも、多くの発達障害を持つ女性が利用されています。彼女たちは外見からは発達障害とは見えず、僕と同じように社会生活で困難や苦労をされてきた方ばかりです。

このコラムでは、女性の発達障害が持つ困難や困り事、そして生きやすくするためのヒント、支援のあり方について、深く掘り下げていきます。

女性の発達障害は「見えづらい」特性を持つ

かつて発達障害は子どものもの、あるいは男性に多いという風潮がありましたが、近年では成人女性にも多く存在することが分かってきました。疫学的な調査では、ASDの男女比は3~4:1、ADHDに至っては1:1に近づいているというデータもあります。

しかし、女性の発達障害には、男性とは異なる「見えづらい」特性があります。

  • ADHDの場合: 女性のADHDは多動・衝動性が行動として表れにくく、不注意型が圧倒的に多い傾向にあります。幼少期から問題行動が目立ちにくく、周囲に気づかれにくいのです。
  • ASDの場合: 女性のASDは受け身型や孤立型が多く、これもまた子どもの頃から特性による問題行動が目立ちにくいため、周囲から気づいてもらいにくい傾向があります。

こうした「見えづらさ」が、女性当事者の生きづらさを増幅させる一因となっています。

思春期以降に顕在化する困難と「ガールズトーク」の壁

僕の場合、発達障害の困り事が顕在化したのは社会にでた20代からと遅かったのですが、女性の場合は思春期以降に様々な困難に直面する人が多いようです。

思春期はホルモンバランスの変化により心身が不安定になりやすい時期です。そこに発達障害の特性が加わることで、困難度合いが増します。さらに、社会的な「いい子でいなければならない」「しっかりしなければならない」という意識が、実際の特性とのギャップを生み、苦しみを深めることがあります。

特に、女性特有の「ガールズトーク」は、発達障害を持つ女性にとって大きな壁となりえます。

  • 共感の難しさ: ガールズトークは共感が重視されるため、ASDの特性で相手の気持ちを推し測ったり、場の空気を読んだりすることが苦手な場合、会話についていけず孤立しやすくなります。
  • 衝動的な発言: ADHDの特性で、場の空気を読まずに思いついたことを口にしてしまったり、会話を仕切ろうとしたりすることで、グループ内に亀裂を生んでしまうこともあります。

結果として、女性グループから仲間外れにされたり、いじめられたりするケースも少なくありません。

性被害のリスクと日本社会の性差的偏見

発達障害を持つ女性は、特性上、性被害に遭うリスクが高いという指摘もあります。

  • 羞恥心や警戒心の低さ: ASDの特性として羞恥心が弱いことや、相手の言葉の裏を読み取ることが苦手なため、異性との距離感が分からず、不用意に性被害に遭いやすい傾向があります。
  • 衝動性と依存: ADHDの特性で衝動的な行動をとったり、相手に依存しやすかったりすることも、トラブルに巻き込まれるリスクを高めます。

カナダの調査では、ASDの女性は健常女性に比べて2~3倍性暴力の被害に遭う可能性が高く、少なくとも1回以上の性暴力被害に遭った割合は78%にものぼると報告されています(法務省)。

さらに、日本社会に根強く残る「女性らしくあるべき」という性差的な偏見が、女性の発達障害者を二重に苦しめています。家事全般が苦手なADHDの女性や、気配りが苦手なASDの女性にとって、こうした旧来の価値観は死活問題となりうるのです。

恋愛・結婚、そして就労における困難

女性の発達障害は、恋愛や結婚においても特有の困難を抱えやすい傾向があります。

  • 恋愛: 相手の気持ちを推し測ることが苦手なため、言葉をそのまま受け止めやすく、トラブルや性被害に遭いやすい。ADHDの衝動性から恋愛相手を次々変えたり、衝動的な関係に陥ったりすることもあります。
  • 結婚: 伴侶との情緒的なコミュニケーションの困難や、家事全般の苦手さから夫婦喧嘩が起きやすく、離婚に至るケースもあります。発達障害の伴侶が「カサンドラ症候群」を発症するリスクも高まります。

就労においても、男性と同様に仕事が長続きしなかったり、転職を繰り返したりして、ストレスからうつ病や引きこもりになってしまう方も少なくありません。特に女性は、社会から求められるコミュニケーション能力の高さが、大きな障壁となることがあります。

生きやすさへのヒント:自己理解と専門機関の活用

では、これらの困難をどうすれば緩和し、乗り越えていけるのでしょうか。

  • 自身の障害特性の把握とメタ認知能力: まずは自分自身の特性を理解し、困難な状況に直面した際に、客観的に自分を見て対処する「メタ認知能力」を養うことが不可欠です。
  • 周囲の理解とサポート: 発達障害は「見えざる障害」であるため、周囲に自身の特性を伝え、理解と協力を得ることが非常に重要です。特に、発達障害があると他人に流されやすくなったり、トラブルに巻き込まれやすいため、常に心から相談できる人を見つける事が重要となります。
  • 専門機関の有効活用: 求職活動や就労においては、一人で抱え込まず、就労支援事業所などの専門機関を積極的に活用することが大切です。専門家によるサポートを受けることで、自身の特性に合った職場を見つけやすくなり、就職後の定着支援も受けられます。

女性の発達障害を持つ方々が、日本社会の制約や壁を乗り越え、自分らしく、いきいきと働くためには、私たち現役世代がモデルを作り、既存の支援やサービスをさらに充実させていく必要があります。

もし今、社会生活や就労に困難を抱えている方がいらっしゃれば、ぜひこのブログや様々なサービス・支援機関を知っていただき、より良い人生に向かって行動してほしいと心から願っています

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