
From Adobe stock
上記の通り40歳を過ぎて未経験業務に応募し、散々な思いを経験したり、会社を敵にまわし雇止めを受けるなどして苦しくも砕け散った僕であった。
こんなにも適合する業種にも限られ、人間関係も必ずと言っていいほど拗れ、最終的に自滅していく羽目になる僕は「社会不適合者ではないか」と感じるようになっていた。
社会にでたばかりの当初は「就職氷河期でたまたま会社に恵まれなかっただけだ」と感じていたが、こうまで転職を繰り返すとなると、もはや問題は「自分自身の中にあるのではないか」と感じるようになっていった。
そんな状態で退職しては失業となり、また新たな転職活動をするのだが当然、前向きになれないのである(今思えばこの段階で仕事をすることは苦痛でしかなくなっていた)。やはり僕にできる仕事はどんなにストレスを溜めようが、コールセンター業務しかないのだろうか・・・そう考え日々転職サイトを眺める僕であった。そんなときちょどタイミングよく都内で過去経験職のISPのテクニカルサポートの仕事を見つけ応募したのであった。)
契約社員として採用が決まりドアツードアで1時間15分位の勤務先が決まった。
例の如くコールセンター業務では業務前の研修が約1~2か月間ほど始まるのである。研修生は僕含め5、6名ほどISP経験者はいなく異業種からの同期ばかりであったが、今回は研修講師が「優しく、頭ごなしに叱らず、とても丁寧に教えてくれる」人であった為、終始研修が和やかにスムーズに進んだ。僕は経験職の為、お客様対応の基本的な部分は理解しており覚えるのは主にサービス内容であった。
同期の男性は1人のみで僕より年上の男の人であった。この方も非常に苦労されてきた方で話を伺うもどうも自分は仕事が覚えられず、過去倉庫の仕分け業務などやってきたが、上司に叱られることが多く雇止めに多くあってきたとの事。この時僕は「僕と同じよう、いやそれ以上に会社や業務に馴染めず苦労されてきた方もいるんだ」と少し心が和らいだが同時に苦労しているミドル世代が日本にはたくさんいるんだろうなと思ってしまい心がまた落ち込むのであった。
そんな状況で研修も進み同期の男性もコールセンターが初めてのなか、電話対応業務になれない様子ではあったが何とか研修にもついてきてOJTを経て晴れて全員現場配属になったのである。
現場は予想していた業務内容であったがここは僕が最初に経験した1000人規模の大所帯コールセンターではなかった。以前示したようにリスク分散化の為、地方センターとの分散化と業務内容によって窓口が分かれていた為、僕たちが担う部署は全部で20~30人程のオペレーターと計4名の男性SV(LSV(リードSV)1名含む)の中小規模の部署であった。
結局この仕事は計1年8か月程ほど続いたが、最後はストレスの極みで退職する事となる。
ストレスの要因は先に同じく、ある上司の異常なパワハラである。
配属部署の4人のSVの内、1人の男性SV(Wとしておく)は最初は第一印象はとても頭脳明瞭そうにみえ、エスカレーションの際もオペレーターに対し敬語を話し高圧的であるようなイメージではない、とても感じのよい「男性」であった。そのほかのSV3人も当然個性は違う為、皆同じようにとはいかないまでも全体的に接しやすくエスカレーションしやすい上司たちであったが先に述べた男性SV(W)とある事がきっかけでハラスメント上司に豹変したのである。
そのある事とは、あるお客様応対で自分が案内した内容に自信が持てなかった為、確認の為にエスカレーションに行った時の事であった。内容としては「問い合わせの本題は解決しており、最後に顧客から頂いた補足質問に対して僕の勘違いから誤った回答をした恐れがあった為、Wに確認に行った」というシチュエーションだ。結果的に僕のミスアナウンスであった場合は①自分の認識の修正と②顧客への訂正架電 をしようと考えていた。
その時のやり取りはこんな感じだった...
——————————————
男性SV:(対応後の僕の質問に対して)「きのやんさん。そもそもあなたの認識は違います。なんでそんな思い込みの対応をしたのですか?どうしてすぐSVに確認しなかったのですか?」
僕:「申し訳ありません。本題の問い合わせは既に解決済で、お客様より最後に補足で質問を受けた内容について自分の認識の範囲で回答してしまいました。その為、対応中は特段SVにエスカレーションする必要はないと思い対応を終了しましたが、対応後に不安になったためお伺いにきました。もし自身の認識が誤っていた場合には、お客様に速やかに再架電しお詫びと訂正をさせていただくつもりです。すいませんでした。」
男性SV(W):「なんで自己判断するですか?もしそのお客様があなたの説明とおり誤案内した別のタイプの商品を購入(ネット接続の際の分配機のような物で量販店で安いものだと2~3千円で売ってるもの)し、間違っていた事が判明し、お客様がお怒りになり、僕たちに損害賠償を求めてきたらどうするんですか?きのやんさん責任とれますか?僕はそんな指示してないから責任とれませんよ!第一、あなたは訂正の架電して済むからいいという気持ちでしょ。なんなんですかそんな安易な考え。」
僕:「申し訳ありませんでした。以後気を付けます。まずお客様に訂正架電をして・・・」
男性SV(W)「勝手に自己判断しないでください!第一あなたが思い込みで案内したんですから!どうしてそんな案内をしたのですか!?なぜSVに確認しにこなかったのですか?ありえないですよね!架電はあたりまえですがそこを認識しないと次回も同じような事が起きますよ!どうしてこうなったのですか!わたしに分かりやすいように説明してください!(このやりとりが永遠とつづく・・・)」
——————————————
Wの第一印象とは別の人格が現れてきた・・・頭脳明瞭のハキハキ上司から、執拗でネチネチくどい粘着上司タイプへ豹変したのだ、しかも僕の顔を下からのぞき込むような視線で言ってくるのである。
今回は些細な案内ミスとはいえ上司の指摘内容はもっともなところではあった為、そこは自分でも反省し、最終的にはお客様に訂正架電しお詫びをし事なきを得るが、その訂正の架電をした後にも他のオペレーターが周りにいる状況にも関わらず、あまりにもしつこく長時間、執拗に僕に対して弁解を求めてくるWに対し、僕はある種の苛立ちを感じていた。
その為、途中で双方売り言葉に買い言葉となって、2人とも感情的になってしまい2人の関係は更にわるくなるのだった・・・
それ以降、僕はなるべくその男性SV(W)にはエスカレーションに行かないように気を付けるも、1日2人か3人のSVしか出社しない為、残りのSV2人がエスカレーション対応で埋まっている時や、その男性SV(W)と同じ島(配席が同じ所)の場合などはどうしてもその男性SV(W)にエスカレーションに行かざるを得ない状況になるのである。
以降はその男性SV(W)は僕に対して冷遇しかしなくなり、ことあるごとに僕の上げ足をとり執拗に心理的に攻めてくるのであった。
こうなってくると発達障害者であろうがなかろうが、Wが出勤する日は僕は出社するのが嫌になるのである。
困った僕はSVの上席のチーフに「助けを求めた」のであったが、結局チーフは何をするのでもなく話は聞いてくれるが、その後もWの僕に接する必要な態度は変わらなかったのである。その間にも状況打開の為、社内のハラスメント窓口や社内の弁護士相談窓口に僕は相談するも結局、担当者とWへの軽い面談は実施されたようだが、それ以降もWの僕に対しての態度はさほど変わらなかったのである。
もう他に助けを求められる窓口はなくなりそれ以降、約1年半、自分を押し殺しなんとか我慢をして業務を続けるも、最後に「ある事」がきっかけで心と身体が悲鳴をあげるのであった。
その「ある事」とは例の如くWへ、顧客のクレーム対応をWに上席対応依頼した時の事だ。
そのお客様は別部署の対応不備と僕の対応の仕方に難癖をつけてこられ、上司への対応交代を求めてきた時だ。(僕は過去経験からクレーム対応が比較的得意だったとはいえ、一次対応の際のクレームや上席対応依頼は誰がやってもどうしても避けられない時はある)
例の様に他のSVはエスカレーションで埋まっていた為、僕の近くの島に座っていたWへ上司交代をせざるを得なくなり、エスカレーションにいったのだが、顧客は激高しているため今すぐ上司に代われという。
代わってほしい旨をWにお願いするも、Wは拒否して「顧客に上司交代はできないと案内しろ」というのだ。
いままでコールセンター対応を10年以上続けてきたが、顧客からの上席交代を拒否した上司は一人もいなかった。僕は驚いた。仕方なく指示どおり顧客に上席対応できない旨を案内するも当然顧客は上席交代を拒否されたのだからさらに激高するのであった。そんな状況で僕は再三、Wに頼み込み何とか、顧客への折り返し対応をしてくれるようになったのだが、驚いたのがその折り返し上席対応が終わった後、「お前からも顧客にまた連絡しろ」と対応が僕に差し戻ってきたのである。
通常、上司がサービス不満や部下の謝罪対応をする際は(すべての責任を上司が背負って)対応しクレームをおさめる必要があるのだが、驚くことに部下の対応不満については再度部下から電話させるというのだ・・・顧客からの要望の可能性もあるが、通常は上司が責任を持ち上司対応で収めるのが通常だ。なんの為の上司なのか。僕をさらに困らせてやろうとでも思ったのだろうか。
その後、僕は指示通り顧客に架電し、僕の対応の至らぬ点を深謝し対応は事なきを得るのだが、その件以降、僕はWに対して更なる過剰な心理的ストレスがかかるようになるのである。
その時とちょうど平行して僕は身体のある部分で手術(頸椎ヘルニアのようなもの)を受けていたため、手術の際のストレスやその後の体力低下で心身が消耗していた時期でもあった。
そんなタイミングでそれから程なくして「朝の満員電車で倒れる」ようになったのである。
しかも2回も。(ある書籍によると自閉スペクトラム症(ASD)の二次被害でてんかんがあるらしい・・・)
よく通勤電車内で「お客様で急病人がいたため電車を一時停止いたしました」というアナウンスを聞いた事がないだろうか。それである。まさか僕がそうなるとは思わなかった。朝の満員電車でいつも通りドアの脇に立っていたが、Wの事を思い出すと突然強い吐き気のような気持ち悪さに襲われ、我慢していると急に意識を失い、満員電車内の床に倒れたのだ。
周りの乗客は皆驚いた様子で心配してくれている。倒れた時間はものの数秒~10秒位で立ち上がったらしく、その際に乗客に聞くと「倒れてから暫くし、すぐ立ち上がりましたよ」というのだ。
最初は脳梗塞か何かでも起きたのかと思って念のため、駅から救急車で病院に運んでもらい脳のCTやMRIも受けるも脳には異常なしの診断だった。(素朴な疑問だがMRIで発達障害は診断できないのだろうか?)同時に頸椎手術した病院にも聞いてみたが、そういった急病人は術後はいなかったとの事だ。
原因が分からぬままであったが、2回目も同様の状況で起きた為、脳(脳神経科)ではなく心臓(循環器系)の病院で診断したところ原因が分かった。
診断結果は「神経調節性失神」別名、「迷走神経反射」というものだ。
簡単にいうと、よく学校の朝礼とかで校長先生が長話している時にグラウンドで急に倒れる子供がいるように、起立している時に多く長時間立ちっぱなしの状態で脳への血流が悪くなり脳が酸素不足になると倒れる仕組みで、一般的によくいう「失神」の類のものであった。
その為、脳梗塞や心筋梗塞などの怖い病気でなく一時的な症状で良かったが、医者曰く「強いストレスにさらされた場合でも起こりやすい」との診断であった為、今回の一連の事象がやはり心身に多大なストレスとなっていたようである。
そういった経緯もあり長期間の間、精神的苦痛に我慢をし続けた結果、僕の心と身体が悲鳴を上げたようだ。
途中、チーフとも相談し、他の部署への異動なども検討材料になったが、最終的には術後の身体的負担とWのパワハラに耐えられないという結論を自ら出し、やむなく辞めるのであった。
ちょうどこの頃からコロナが世界中を賑わせ始めるのであった・・・