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そんなパワハラ体質の葬儀社をたった3か月で退職した僕だが年齢も40を超えておりなかなか再就職が厳しくなっていた。
もう35歳を超えると「選べる仕事も限られるし」「自分に合いそうな仕事を応募」しても書類選考通過して面接まで行くのは稀なのである。その為、限られるのは当然経験職種だがこれも応募しても「既に10回近く転職している40の男を採用する会社など皆無に近い」状況で八方ふさがりなのである。要はミドル層で特段とりえもなく転職が多い奴は「死ね」と社会は言っているのである。
いまの嫁に食べさせてもらっていなかったら僕は確実に生活保護か浮浪者になっていたであろう・・・情けなさ過ぎて涙がでてくる。
そんなゆがんだ社会の不条理に憤りを常に抱いているが、嘆いてばかりでもいられない。やはり生活の質を少しでも上げるには共働きをするしかないのだから。そして求人で応募し採用される可能性が高い職種と言えばコールセンターぐらいしかないのだ。
例によって求人サイトをまた眺めているのだが近隣で上記条件にあった仕事は少なく、過去に応募した仕事などで門戸が限られていた。そんななかコールセンターで非正規社員として応募しているコールセンターがあたので応募してみた。その会社は免許系のコールセンターを運営している中小企業で採用面接を経てコールセンター管理者を前提とした採用が決まったのだった。
実際の業務は自動車免許取得を希望している学生などからの問い合わせがメインで教習所や合宿免許の紹介などをしている業務だ。コールセンターと言っても雑居ビルの1室を借りそのフロアにオペレーターや営業部、役員などの席がある小規模なセンターだった。従業員のオペレーターは主に主婦や女子学生が殆どで常時10~20人のオペレーターが業務をまわしている状況だ。
コールセンターの管理者は1人しかおらず実質センター長とマネージャーを兼務していた。歳は僕と同じくらいだろうか・・・威厳はなく低姿勢ではあるが、まごまごした口調ではっきりしない頼りない人であった。新人の僕は当然オペレーター業務から研修を受けるのだが、過去経験したような大規模なセンターではなく研修システムもしっかりしていない小規模事業所であった為、入社後も半ば放置状態で空き時間にマネージャーがちょこっと業務を教えてくれる程度であった。
業務内容は事務的でオペレーターごとに役割分担がなされていた。簡単にいうと入電したあと「問診係が対応して希望状況を伺う係」、「希望から適切な教習所や合宿などのプランを紹介する係(既に希望があった場合はその事業所やプランを申し込みする)」、「まったく分からずサービス紹介から入所まですべてを受け持つベテラン係」など分業化していた。
オペレーター比率99%の女性の中に混じり40代のおっさんがハンドル(お客様対応)するのだが、例により注意欠如・多動症(ADHD)要素が強く分業化された事務的な仕事は苦手であった。そのため入電から希望を伺い次の窓口にバトンタッチするのだが、その事務処理が煩雑でなかなか「スピード間」をもって「正確に処理」が苦手なのだ。そんな「仕事になかなか馴染めない」状況で例によりまたあるトラブルを起こすのである。(トラブルというより被害に巻き込まれるといったほうがいいだろう)
大規模センターの場合、営業部門とお客様対応のコールセンター部門は独立しているものだが、ここは小規模コールセンターの為コール業務を行っているすぐ隣に営業部署がいるのだ。そして当然、中小企業で営業と言えばパワハラ体質の所が多くこの事業所も例外ではなかった。営業部署の部長がいつもふんぞり返ってデスクに座っており、部下をいつも大声で叱責している。
その大声で話す部長の横でコールオペレーターの女性達は何事もないように皆平然と対応するのだ。
そういった状況が僕には苦痛なのだ。他人が指摘されていたり怒られているだけでも苦痛を感じやすい発達障害はとにかく「職場内環境に敏感なのだ」。
そして叱責を受けた営業男性社員、年齢では30代後半くらいであろうか、そいつが溜まったストレスをあろうことか隣の僕たちがいるコールセンター部署にぶつけてくるのだ。ただぶつけるといっても部長と同様にすると明らかなハラスメントになる為、感情的にではなく「ネチネチ」「ウジウジ」執拗に言ってくるのだ。ベテランオペレーター女性たちは上手くあしらい対応している。
だだ事もあろう事か新人の僕にもネチネチ、ウジウジ言ってくるのである。しかも頭ごなしに一方的に。それに「イラッ」とした僕は配属したばかりでまだ業務が把握しきれていない事を説明するもそのネチネチ営業は我関せずの様子である。「自分はさも営業で仕事ができて上司の信頼もあり、コールセンターのオペレーターは営業の俺の指示に従っていればいいんだよ」という態度である。
話し方が気持ち悪く虫唾が走る。そんな中、マネージャーと入社面接をした女性社員(採用部署などない為、事務職)の2人にネチネチ営業社員からハラスメントを受けた経緯を説明し、そいつからのパワハラにストレスを感じている為、行為を辞めてもらうように上申するのだが、その相談がその後思わぬ事態となり僕を追い込むのである...
朝礼後にオペレーターは業務に入るのだが、毎週の週はじめは幹部達(営業、マネーージャー、役員)が定例ミーティングを別室で行うのである。その定例ミーティングでは副社長(社長の次男。社長は出社した所を見たことがない)も同席でミーティングするのだ。副社長と言っても表現は悪いが銀座飲み屋にハンドバックを下げていくようなチンピラような感じのタイプである。
上記の僕のパワハラ相談の話自体が、おそらくその幹部ミーティングの場で議題にあがったであろう。定例ミーティングが終わり、戻ってきたチンピラ副社長の顔を何気なく見ると差別的な目線が僕に注がれるのである。目ではまさに「あるはずもないハラスメント行為を上申する奴はお前だな・・・」というような視線である。自分はこの時直観した。また例の如く組織全体で僕をを潰す気なのか?と。その直感は当たった。それ以降、僕は前回と同様、社内の人間に「腫れ物」に触るように扱いされ始めた。
マネージャーも当初は「唯一コールセンター管理者候補の僕と2人で頑張っていこう」というような姿勢で僕に接してくれていたが、「それ(僕がハラスメント被害を訴えてから)」以降は態度が変わり「厄介者」をあつかうような接し方に豹変した。この会社も前回の葬儀者と同様、上司は「絶対」であり。会社のトップは君主であり、下は奴隷の縦組織なのだ。
それから少し経ったある日、マネージャーに呼ばれ僕は「業務の覚えが悪い」からと一方的に担当を外されたのだ。これも明らかな「ハラスメント」である。
もうこんな腐った会社にいる気はさらさらなくなり、どうせ辞めるなら言いたい事を言ってやめようと決意した。そのマネージャーに「どうせ社長や営業の指示でそうしたのであろう。
あなたは正常な判断ができるであろうから僕の困り事(ハラスメントを受けた事)を理解し、それをした営業も問題だと理解しているはず。それにも関わらず誤った対応をした営業に意見もせず、全員が一緒になって僕を退職に追い込もうとしているのは明白だ。そんなことをして自分の心が痛まないのか?管理者が事の善悪も判断できないとは。あなたには失望した。上司とはいえ間違った事を間違っているとも言えずなんの為のマネージャーなのか?一生営業や幹部に命令されコキへつらいながらあんたは仕事をしていくのか?」など今までの不満を洗いざらい全部ぶちまけた。マネージャーは平常心を装っていたが、態度から内心明らかな動揺は感じ取れた。僕は心底こんな卑怯な奴と仕事をすることに嫌気がさした。
それから間もなく派遣担当者(派遣担当と言ってもこの会社は派遣元と派遣先(勤務先)が同一の会社であり事務担当が派遣担当を兼務している)に呼び出され、「次回の契約更新はできない事、またアルバイトでも業務ができない」ようは「一方的な雇止め」を告げられた。
派遣会社と勤務先が同一で、経営上層部からの圧力がかかれば派遣担当も意を唱えることができず派遣社員を切り捨てる、なんという腐った会社だ。業務未習熟(明らかな言いがかり)だけでは明白な理由とならず、本来明確な理由がなければ雇止めなどできない不当解雇のはずだが非正規なので立場が弱すぎる。
僕はこの腐りきった連中から一日でも早く離れたかったので、不本意ながら承諾せざるを得なくなり契約更新満了となったのだ。
結局、僕は前職と同様、全員を敵にまわしての退職となったのだ・・・