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15回以上の転職を繰り返し、心も体もボロボロになり、僕はひきこもりになった。
将来への希望など、何一つない。ただ、時間だけが過ぎていく。社会から、いや、世界から取り残されたような感覚。妻との関係は良好であるが、過去に何度も僕の何気ない一言が起因して夫婦喧嘩をして離婚の危機に瀕している。
そんな絶望的な毎日を送っていた、ある日のことだった。
何気なく広げた新聞の、社会面の片隅に、その特集記事はあった。
「大人の発達障害、増える当事者の苦悩」
「発達障害」。言葉自体は、聞いたことがあった。でも、それは子供の病気だと思っていた。僕のような、40歳を過ぎたおっさんには、全く関係のない世界の話だと。
しかし、なぜかその見出しに、僕は強く惹きつけられた。吸い寄せられるように、記事の本文に目を落とす。
そこには、僕の半生が、そのまま書かれていた。
記事に書かれていた「大人の発達障害」の特性
仕事が長続きしない
人間関係をうまく築けない
場の空気が読めず、失言が多い
些細なことでカッとなり、キレてしまう
…え?
…これ、俺のことじゃないか?
全身に、鳥肌が立った。心臓が、ドクン、ドクンと大きく脈打つのが分かる。
僕が今まで「自分の性格が悪いからだ」「努力が足りないからだ」と、自分を責め続けてきた数々の失敗。その全てが、この記事に書かれている「特性」という言葉で説明できてしまう。
今までバラバラだった僕の人生の失敗というパズルのピースが、カチリ、カチリと音を立ててはまっていくような、不思議な感覚。
それは、恐怖であると同時に、一筋の光のようにも思えた。
もし、もし本当に、僕のこの「生きづらさ」の原因が、僕のせいではなく、この「発達障害」というものにあるのだとしたら…。
僕は、震える手でパソコンを開き、検索窓にその言葉を打ち込んだ。
僕の人生が、再び動き出した瞬間だった。