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【第4話】女医さんとの初診。僕の人生を紐解く問診

診断イメージ

From Adobe stock

支援員さんとの長い電話から数週間後、僕はついに精神科の診察室の前にいた。予約時間まで、あと10分。
心臓の音が、待合室に響き渡っているんじゃないかと思うくらい、うるさく鳴り響いていた。

あらかじめ支援員さんからは、客観的な情報が必要になるため、可能であれば母親と妻を同席させるよう言われていた。僕は母と妻の3人で、精神科のドアを叩いた。

「一体、何を話せばいいんだろう」
「変な奴だと思われたらどうしよう」

頭の中を、不安がぐるぐると駆け巡る。支援員さんとの電話で少し軽くなったはずの心が、また鉛のように重くなっていくのを感じていた。


「きのやんさーん、どうぞー」

名前を呼ばれ、恐る恐る診察室のドアを開ける。そこにいたのは、白衣を着た、優しそうな雰囲気の女医さんだった。

「はじめまして、きのやんさん。〇〇です。今日は、よく来てくださいましたね」

その穏やかな声に、僕の緊張は少しだけほぐれた。

女医さんとの問診
女医さんとの問診では、主に現在の困りごとについて、一つ一つ丁寧に聞かれました。

・発達障害のチェックリストに沿った質問
「人の気持ちを察するのが苦手だと感じますか?」
「冗談や皮肉が通じにくいと言われたことは?」
「決まった手順やルールが変わると、強いストレスを感じますか?」
「忘れ物や失くし物が多いですか?」
「つい、思ったことを衝動的に口にしてしまうことは?」
などなど・・・

・15回以上繰り返した、めちゃくちゃな職歴について
・妻との関係、カサンドラ症候群のこと
・そして今、何に一番困っているのか


※僕の幼少期の様子や学校の成績など、小さかった頃の話については、この後、臨床心理士の方が母親に詳しく聞き取りをしていました。

僕は、たどたどしくも、正直に全てを話した。誰にも言えなかった、心の奥底にしまい込んでいた失敗談や、恥ずかしい過去。話しているうちに、また涙が溢れてきそうになった。

一通り僕の話を聞き終えた後、女医さんは静かにこう言った。

「きのやんさん、今まで、本当に一人でよく頑張ってこられましたね。」

支援員さんに言われた時と同じ言葉。でも、医師という専門家から言われたその言葉は、僕の心を根底から救い上げてくれるような、不思議な力を持っていた。


「おそらく自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症の発達障害だと思われます」

女医さんは、チェック項目と僕の話からそのように説明し、それを裏付けるために一度、詳しく心理検査を受けることを提案してくれた。

「WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)という知能検査で、ある程度、発達の傾向が判断ができます。また、きのやんさんの得意なこと、苦手なことも分かりますので受けて頂くのが良いと思います。」

怖い、という気持ちは、もうなかった。

むしろ、「やっと、自分の正体が分かるかもしれない」という、期待の方が大きかった。

僕は、迷わず「お願いします」と答えた。こうして、僕の「自分探しの旅」は、次のステージへと進むことになったのだ。


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