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【参考:僕が選んだ道】就労継続支援という働き方について



「3つの道を徹底比較!」の記事を読んでくださった方の中には、「きのやんさんは、なぜ最終的に就労継続支援を選んだの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。その詳しい経緯や僕の想いは、「発達障害診断までの経緯」の最終話でお話ししていますが、このページでは、僕個人の物語から少し離れて、「就労継続支援」という選択肢そのものについて、より客観的に、そして詳しく解説していきたいと思います。このページが、あなたが自分に合った道を選ぶための、一つの「参考書」になれば幸いです。


就労支援イメージ14

From Adobe stock


Information

この記事を書いた人:きのやん

15回以上の転職を経験した発達障害の当事者であり、現在は、就労継続支援事業所で働く「支援員」でもあります。当事者としての「辛い気持ち」と、支援員としての「客観的な視点」。その両方を知っている僕だからこそ、伝えられることがあります。


待ってください! 働く以前に、まずは生活を安定させたい、という方にはこういう選択肢もあります。(番外編)

「就労継続支援ですら、今の自分にはハードルが高いかもしれない…」と感じた方もいるかもしれません。長期間社会から離れていた方や、ひきこもりがちだった方にとっては、まず「生活のリズムを取り戻す」こと自体が、大きな一歩です。そんなあなたのために、「自立訓練(生活訓練)」という、もう一つの大切な選択肢があります。

📚自立訓練(生活訓練)とは?

一言でいうと、「社会生活を送るための、基本的な力を身につける場所」です。働くことをゴールにするのではなく、その前段階として、安定した日常生活を送るための様々な訓練(生活スキル、コミュニケーションなど)を、自分のペースで学ぶことができます。

こんな方におすすめ利用にあたり必要なもの
自立訓練(生活訓練)
昼夜逆転の生活から抜け出したい

ひきこもりがちで、外に出るきっかけがほしい


退院後、生活のリズムを整えていきたい


金銭管理や健康管理など、基本的な生活スキルに不安がある


まずは、安心して話せる「居場所」がほしい


障害福祉サービス受給者証

利用タイプ内容
機能訓練
身体的なリハビリなどを通じて、身体機能の維持・向上を目指す訓練

生活訓練
日常生活に必要なスキル(金銭管理、健康管理、対人関係など)を
身につける訓練


事業所の種類内容
通所型
事業所に通いながら、日中の活動として訓練を受ける。昼夜逆転の改善や
日中の居場所がほしい方におすすめ

訪問型
支援員が自宅を訪問し、自宅で訓練を受ける。ひきこもりがちで
外に出るのが難しい方や退院後の方におすすめ

宿泊型
事業所の施設に宿泊しながら、24時間体制で生活のサポートを受ける。
家族から自立したい、一人暮らしに不安がある方におすすめ



メリット

生活リズムの改善や、基本的な生活スキルからじっくり立て直せる

就労へのプレッシャーがなく、心の安定を最優先できる

自分の状況に合わせて、通所・訪問・宿泊といったサポート形式を選べる

デメリット(と僕の不安)

賃(給料)は一切発生しない

利用期間に原則2年という上限がある

就職に直結する専門的なスキルを学ぶ場所ではない




就労継続支援B型との主な違い

自立訓練(生活訓練)B型事業所
最終的な目標安定した日常生活を送ること働くことを通じて社会参加すること
活動内容生活スキル訓練が中心軽作業など多岐にわたる生産活動が中心
工賃原則なしあり

「働く」というステップが、まだあまりにも高く、遠い壁のように感じているあなたへ
焦る必要は、全くありません。まずは、生活のリズムを整え、安心して過ごせる「居場所」を見つけること
それが、あなたの新しい人生を始めるための、最も優しく、そして最も確実な第一歩になります。





就労継続支援事業所 A型とB型、何が違うの?一目でわかる比較表

就労継続支援事業所には、「A型」と「B型」の2種類があります。この二つの最も大きな違いは、「雇用契約を結ぶかどうか」です。まずは、下の表で全体像を掴んでみてください。

A型事業所B型事業所
雇用契約ありなし
給料(工賃)最低賃金以上が保証作業の成果に応じた工賃
(最低賃金の保証なし)
対象者原則18歳~65歳未満で
一定の支援があれば雇用契約に基づき
働ける方
年齢制限なし。
雇用契約を結んで働くことが
現時点では難しい方

就労継続支援A型を深掘り

A型は、一言でいうと「配慮のある会社で、働きながらステップアップを目指す場所」です。一般企業への就職にはまだ不安があるけれど、安定した収入を得ながら、社会人としての経験を積みたいという方に適しています。

メリット
一般就労への移行を目指すためのステップにできる。
雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が保証される。
社会保険に加入できる場合がある。
一般企業に近い環境で働くため、ビジネスマナーや実践的なスキルが身につく。

デメリット
雇用契約があるため、働くことへの責任やプレッシャーが大きい。
原則として、決まった日時に出勤する必要があり、勤怠の安定が求められる。
面接で落とされる可能性がある


就労継続支援B型を深掘り

B型は、一言でいうと「自分のペースで、社会との繋がりを取り戻すための『居場所』」です。現時点では長時間働くことに不安がある方や、まずはリハビリから始めたいという方に最適な選択肢です。

メリット
雇用契約を結ばないため、体調に合わせて週1日や短時間からでも通える。
A型に比べ精神、肉体的な負担が少なく、自分のペースで作業に慣れていくことができる。
作業内容は多岐にわたり、自分が興味を持てるものを見つけやすい。
社会との繋がりを持ち、日中の居場所ができる。

デメリット
雇用契約がないため、工賃は最低賃金を下回ることがほとんど。
工賃だけで生活していくのは、現実的に難しい。
社会保険には加入できない。


【きのやん流】後悔しない事業所の見つけ方

A型、B型どちらを選ぶにしても、最も重要なのは「自分に合った事業所を見つけること」です。僕は、見学や体験の際に、必ず以下のポイントをチェックするようにしていました。

事業所は自宅から通える距離にあるか?
(無理なく通い続けられることは、何より大切です。通勤だけで疲弊してしまっては、元も子もありません)

作業内容は自分の障害特性に合っているか?
(例えば、僕のようにADHDで集中が続きにくい人は、単純作業より、少し変化のある作業の方が向いているかもしれません)

事業所の雰囲気は、自分に合っているか?
(活気がある場所か、静かな場所か。利用者さんの表情は明るいか?直感を信じましょう)

支援員さんは、親身に話を聞いてくれるか?
(上から目線ではないか、あなたの話を否定せずに受け止めてくれるか。ここが一番重要です)

在宅での作業は可能か?
(これは事業所ではなく、お住まいの自治体が判断することですが、在宅という選択肢があるかどうかも、僕にとっては検討内容のひとつでした)

面倒くさがらずに、必ず複数の事業所を見学し、「ここなら、安心して通えそうだ」と心から思える場所を見つけてください。


A型・B型、結局どちらを選べばいい?きのやん的まとめ

A型事業所は、こんな方におすすめ

一般企業のフルタイム勤務はまだ厳しいけれど、自分の障害特性を理解してもらいながら、雇用契約を結んだ上で、安定した収入を得て働きたい方。

B型事業所は、こんな方におすすめ

精神的・肉体的に、まだ働くこと自体が困難だと感じている方。体調に合わせて柔軟に通い、リハビリ感覚で何か作業をしながら、まずは社会との繋がりを取り戻したい方。


選ぶ前にきのやんからのお願い
就労継続、就労移行、転職エージェント、どのサービスが優れているか?ではありません。大切なのは、自分は何がやりたいのか?診断結果や自身の適正検査の結果を元に、「今」のあなたの置かれている状況を冷静に判断し、最終的にどの選択肢が最も自分に合っているか。で選んでみてください。