「3つの道を徹底比較!」の記事を読んでくださった方の中には、「きのやんさんは、なぜ最終的に就労継続支援を選んだの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。その詳しい経緯や僕の想いは、「発達障害診断までの経緯」の最終話でお話ししていますが、このページでは、僕個人の物語から少し離れて、「就労継続支援」という選択肢そのものについて、より客観的に、そして詳しく解説していきたいと思います。このページが、あなたが自分に合った道を選ぶための、一つの「参考書」になれば幸いです。

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待ってください! 働く以前に、まずは生活を安定させたい、という方にはこういう選択肢もあります。(番外編)
「就労継続支援ですら、今の自分にはハードルが高いかもしれない…」と感じた方もいるかもしれません。長期間社会から離れていた方や、ひきこもりがちだった方にとっては、まず「生活のリズムを取り戻す」こと自体が、大きな一歩です。そんなあなたのために、「自立訓練(生活訓練)」という、もう一つの大切な選択肢があります。
📚自立訓練(生活訓練)とは?
一言でいうと、「社会生活を送るための、基本的な力を身につける場所」です。働くことをゴールにするのではなく、その前段階として、安定した日常生活を送るための様々な訓練(生活スキル、コミュニケーションなど)を、自分のペースで学ぶことができます。
こんな方におすすめ | 利用にあたり必要なもの | |
自立訓練(生活訓練) | 昼夜逆転の生活から抜け出したい ひきこもりがちで、外に出るきっかけがほしい 退院後、生活のリズムを整えていきたい 金銭管理や健康管理など、基本的な生活スキルに不安がある まずは、安心して話せる「居場所」がほしい | 障害福祉サービス受給者証 |
利用タイプ | 内容 |
機能訓練 | 身体的なリハビリなどを通じて、身体機能の維持・向上を目指す訓練 |
生活訓練 | 日常生活に必要なスキル(金銭管理、健康管理、対人関係など)を 身につける訓練 |
事業所の種類 | 内容 |
通所型 | 事業所に通いながら、日中の活動として訓練を受ける。昼夜逆転の改善や 日中の居場所がほしい方におすすめ |
訪問型 | 支援員が自宅を訪問し、自宅で訓練を受ける。ひきこもりがちで 外に出るのが難しい方や退院後の方におすすめ |
宿泊型 | 事業所の施設に宿泊しながら、24時間体制で生活のサポートを受ける。 家族から自立したい、一人暮らしに不安がある方におすすめ |
メリット
生活リズムの改善や、基本的な生活スキルからじっくり立て直せる
就労へのプレッシャーがなく、心の安定を最優先できる
自分の状況に合わせて、通所・訪問・宿泊といったサポート形式を選べる
デメリット(と僕の不安)
賃(給料)は一切発生しない
利用期間に原則2年という上限がある
就職に直結する専門的なスキルを学ぶ場所ではない
就労継続支援B型との主な違い
自立訓練(生活訓練) | B型事業所 | |
最終的な目標 | 安定した日常生活を送ること | 働くことを通じて社会参加すること |
活動内容 | 生活スキル訓練が中心 | 軽作業など多岐にわたる生産活動が中心 |
工賃 | 原則なし | あり |
きのやんの推しポイント
「働く」というステップが、まだあまりにも高く、遠い壁のように感じているあなたへ。
焦る必要は、全くありません。まずは、生活のリズムを整え、安心して過ごせる「居場所」を見つけること。
それが、あなたの新しい人生を始めるための、最も優しく、そして最も確実な第一歩になります。
就労継続支援事業所 A型とB型、何が違うの?一目でわかる比較表
就労継続支援事業所には、「A型」と「B型」の2種類があります。この二つの最も大きな違いは、「雇用契約を結ぶかどうか」です。まずは、下の表で全体像を掴んでみてください。
A型事業所 | B型事業所 | |
雇用契約 | あり | なし |
給料(工賃) | 最低賃金以上が保証 | 作業の成果に応じた工賃 (最低賃金の保証なし) |
対象者 | 原則18歳~65歳未満で 一定の支援があれば雇用契約に基づき 働ける方 | 年齢制限なし。 雇用契約を結んで働くことが 現時点では難しい方 |
就労継続支援A型を深掘り
A型は、一言でいうと「配慮のある会社で、働きながらステップアップを目指す場所」です。一般企業への就職にはまだ不安があるけれど、安定した収入を得ながら、社会人としての経験を積みたいという方に適しています。
メリット
一般就労への移行を目指すためのステップにできる。
雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が保証される。
社会保険に加入できる場合がある。
一般企業に近い環境で働くため、ビジネスマナーや実践的なスキルが身につく。
デメリット
雇用契約があるため、働くことへの責任やプレッシャーが大きい。
原則として、決まった日時に出勤する必要があり、勤怠の安定が求められる。
面接で落とされる可能性がある
就労継続支援B型を深掘り
B型は、一言でいうと「自分のペースで、社会との繋がりを取り戻すための『居場所』」です。現時点では長時間働くことに不安がある方や、まずはリハビリから始めたいという方に最適な選択肢です。
メリット
雇用契約を結ばないため、体調に合わせて週1日や短時間からでも通える。
A型に比べ精神、肉体的な負担が少なく、自分のペースで作業に慣れていくことができる。
作業内容は多岐にわたり、自分が興味を持てるものを見つけやすい。
社会との繋がりを持ち、日中の居場所ができる。
デメリット
雇用契約がないため、工賃は最低賃金を下回ることがほとんど。
工賃だけで生活していくのは、現実的に難しい。
社会保険には加入できない。
【きのやん流】後悔しない事業所の見つけ方
A型、B型どちらを選ぶにしても、最も重要なのは「自分に合った事業所を見つけること」です。僕は、見学や体験の際に、必ず以下のポイントをチェックするようにしていました。
✅事業所は自宅から通える距離にあるか?
(無理なく通い続けられることは、何より大切です。通勤だけで疲弊してしまっては、元も子もありません)
✅作業内容は自分の障害特性に合っているか?
(例えば、僕のようにADHDで集中が続きにくい人は、単純作業より、少し変化のある作業の方が向いているかもしれません)
✅事業所の雰囲気は、自分に合っているか?
(活気がある場所か、静かな場所か。利用者さんの表情は明るいか?直感を信じましょう)
✅支援員さんは、親身に話を聞いてくれるか?
(上から目線ではないか、あなたの話を否定せずに受け止めてくれるか。ここが一番重要です)
✅在宅での作業は可能か?
(これは事業所ではなく、お住まいの自治体が判断することですが、在宅という選択肢があるかどうかも、僕にとっては検討内容のひとつでした)
面倒くさがらずに、必ず複数の事業所を見学し、「ここなら、安心して通えそうだ」と心から思える場所を見つけてください。
A型・B型、結局どちらを選べばいい?きのやん的まとめ
A型事業所は、こんな方におすすめ
一般企業のフルタイム勤務はまだ厳しいけれど、自分の障害特性を理解してもらいながら、雇用契約を結んだ上で、安定した収入を得て働きたい方。
B型事業所は、こんな方におすすめ
精神的・肉体的に、まだ働くこと自体が困難だと感じている方。体調に合わせて柔軟に通い、リハビリ感覚で何か作業をしながら、まずは社会との繋がりを取り戻したい方。
❗選ぶ前にきのやんからのお願い
就労継続、就労移行、転職エージェント、どのサービスが優れているか?ではありません。大切なのは、自分は何がやりたいのか?診断結果や自身の適正検査の結果を元に、「今」のあなたの置かれている状況を冷静に判断し、最終的にどの選択肢が最も自分に合っているか。で選んでみてください。