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「今さら就労移行支援なんて、手遅れじゃないか…」
「障害者雇用といっても、結局は若い人が有利。30代、40代の自分なんて、どうせ採用されないんだろう…」
僕も、心のどこかでそう思っていました。診断を受けて、やっとスタートラインに立てたと思ったのに、目の前には「年齢」という、あまりにも高く、分厚い壁がそびえ立っているように感じていました。
このページは、そんなかつての僕と同じ不安を抱える、あなたのためだけに書いたものです。
結論から言います。30代、40代からの再スタートは、決して不可能ではありません。
なぜなら、僕たちの世代には、若さにはない「武器」があり、その武器を求める企業が、確かに存在するからです。このページでは、その事実を、客観的なデータと、僕自身の経験から導き出した「戦略」によって証明します。
データで見る「30代・40代の障害者雇用」のリアル
まずは、現実を見てみましょう。「年齢の壁」は、本当に存在するのでしょうか?厚生労働省が発表しているデータを見ると、驚くべき事実が分かります。
45.2%
ハローワークを通じた障害者の就職件数のうち、40歳以上が占める割合
(出典:厚生労働省「令和4年度 障害者の職業紹介状況等」)
約80%
精神障害者の就職者のうち、35歳以上が占める割合
(出典:厚生労働省「障害者雇用の現状等」平成29年)
どうでしょうか。確かに、20代の就職者数が多いのは事実です。しかし、就職している人の半数近くは、40歳以上なのです。特に、僕たちと同じように精神障害や発達障害で悩む人の多くは、30代、40代になってから就職を実現しています。データは、はっきりと示しています。「もう若くないから」という理由だけで、諦める必要は全くない、ということを。
なぜ、30代・40代こそ「選ばれる」可能性があるのか
ではなぜ、企業は30代、40代の障害者雇用に積極的なのでしょうか?
それは、企業が僕たちに、若さとは別の「価値」を求めているからです。多くの企業の採用担当者の本音として中高年の障害者雇用に期待しているのは、以下の3つのポイントです。
企業が30代・40代に期待する「3つの力」
1.社会人経験とビジネスマナー:
基本的な敬語の使い方や、報告・連絡・相談の重要性を理解している。ゼロから教える必要がないため、教育コストがかからないという点は、企業にとって大きなメリットです。
2.経験に裏打ちされた柔軟性と粘り強さ:
10年、20年と社会の荒波に揉まれてきた経験は、伊達ではありません。理不尽なこと、うまくいかないことを数多く乗り越えてきた人生経験そのものが、ストレス耐性や問題解決能力として高く評価されます。
3.高い定着率への期待:
「ここが最後の職場かもしれない」という覚悟を持って応募してくる方が多く、仕事に対する真摯な姿勢が、長く会社に貢献してくれるだろうという信頼に繋がります。
さらに、もしあなたに後輩の指導やチームをまとめた経験があれば、それは「マネジメント経験」という、若手にはない強力な武器になります。
僕の15回以上という転職歴ですら、見方を変えれば「それだけ多様な業界を知っている、引き出しの多い人材だ」と捉えることができます。あなたのこれまでの人生経験は、決して無駄ではありません。それは、あなただけの「価値」になるのです。
30代・40代が面接で勝つための「戦略」
とはいえ、ただ待っているだけでは道は開けません。僕たちの世代には、僕たちの世代なりの戦い方があります。採用担当者の本音を踏まえた、面接でのアピールポイントと注意点をお伝えします。
アピールすべき強み
自分の障害特性の説明と配慮事項を明確に伝える
例文:「僕はASDの特性上、急な変更や曖昧な指示が苦手です。しかし、事前にチャット等で手順を明確にしていただければ、高い集中力で正確に業務を遂行できます。」
これまでの失敗から学んだ「自己理解」の深さ
例文:「これまでの多くの失敗から、自分がどのような状況でミスをしやすいかを客観的に分析できております。そのため、先回りしてメモを取る、ダブルチェックをお願いするなどの対策を講じることができます。」
数々の困難を乗り越えてきた「精神的なタフさ」
例文:「15回以上の転職を経験しましたが、その都度、新しい環境に適応し、立ち上がってきました。この粘り強さは、御社でも必ず活かせると考えております。」
「長く働きたい」という真摯な姿勢
例文:「これまでの経験を踏まえ、今度こそ腰を据えて、御社に長く貢献したいと心から願っております。」
注意すべき点
過去の成功体験に固執する「頑固さ」を見せない
NG例:「前の会社ではこうでした」と過去のやり方を押し付ける。
OK例:「新しいやり方を学ぶことに前向きです。もし、僕のやり方が古いようでしたら、ご指導いただけますと幸いです。」
年下の面接官に対しても、謙虚な姿勢を忘れない
NG例:年下の面接官に対して、経験をひけらかすような態度を取る。
OK例:「〇〇様のご質問、大変勉強になります。私の経験としましては…」と、相手への敬意を払いつつ話す。
必要な配慮を、遠慮したり曖昧に伝えたりしない
NG例:「ちょっと、コミュニケーションが苦手で…」と曖昧に伝える。
OK例:「口頭での指示は忘れてしまうことがあるため、チャットやメールなど、テキストでご指示いただけますと大変助かります。」と具体的に伝える。
採用担当者に僕たち30代~40代には「今までの社会経験を踏まえた総合力」を求めています。「安定した勤怠」であったり「前向きな考え方」であったり
「自身の障害を客観的に見つめ、説明できる力」であったり「部下を育てられる人材」であったり。20代にはない、いままで社会経験をしてきたからこそ
でしか味わえない「経験や深み」を求めています。
そういった企業側の願いを、面接でアピールできれば採用確率はグッと上がるはずです。
「年齢」を「武器」に変えるための、たった一つの戦略
では、どうすれば年齢という不安を、採用担当者に響く「武器」に変えることができるのか。その答えは、たった一つです。
「客観的な自己分析」と「プロによる伝え方」を手に入れること。
発達障害者支援法ガイドブックにも記載されておりますが、僕のような「発達障害をもつ人の就労は、困難な事、苦手な事は回避し、興味や長所を生かせる仕事に就くことすなわちジョブマッチングが大事であるが、そのためには求職活動の早期から就労支援の専門家が関与する事が重要である」と明記されています。その為、プロの支援員やエージェントを利用してのジョブマッチングが非常に重要となってきます。
これまでの人生経験を「強み」として棚卸しし、それを企業の採用担当者に正しく伝える「戦略」を練る。このプロセスを、障害のもつ私たち一人でやるのは非常に困難です。だからこそ、就労移行支援で支援員と一緒に自分の「取扱説明書」を作り上げたり、転職エージェントに自分の価値を企業に正しく伝えてもらう「戦略」を一緒に考えてもらうことが、僕たちには何よりも重要になるのです。
不安は解消されましたか?
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年齢は、諦める理由にはなりません。それは、あなただけの、かけがえのない価値になるのです。その価値を信じて、次の一歩を踏み出してみませんか?