「大人の発達障害って、最近よく聞くけど、結局なんなの?」
「自分が当てはまるかどうか、具体的な症状や困りごとを知りたい」
診断を受ける前の僕も、専門用語だらけの本やサイトを読んで、頭がパンクしそうになっていました。だからこのページでは、難しい言葉は一切使わずに
僕自身の言葉で、「発達障害って、一体何なのか」を、あなたの具体的な悩みに沿ってお話しします。

From Adobe stock
そもそも大人の発達障害とは何か?
まず、一番大切なことをお伝えします。発達障害は、心の「病気」や、あなたの「性格が悪い」ということではありません。一言でいうと、「生まれつきの、脳の働きのクセ」のようなものです。多くの人が当たり前にできることが、僕たちにはすごく難しかったり、逆に、多くの人が気にしないようなことに、驚くほどの集中力を発揮したり。その「凸凹(でこぼこ)」こそが、僕たちの正体です。代表的なものに、ASDとADHDがあります(その他LDなど)。
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
Autism Spectrum Disorderの略で、主に「対人関係や社会的なコミュニケーションの苦手さ」と「特定の物事への強いこだわり」という2つの特性を持っています。僕の言葉で言うなら、「自分だけのルールブックで生きている人」。だから、周りの人の「普通」や「常識」が理解できず、悪気なく人を傷つけたり、孤立してしまったりするのです。
※ASDには大きく4タイプ(「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」)あり、僕は「積極奇異型(少し尊大型もあり)」のタイプです。
注意欠如・多動症(ADHD)とは?
Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの略で、主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性を持っています。よく「フェラーリのエンジンに、自転車のブレーキ」と例えられます。興味のあることへの集中力(過集中)は凄いのですが、注意が散漫で、思いついたらすぐに行動してしまう。僕が簡単なミスを連発したり、カッとなって人間関係を壊してきたのは、主にこの特性が原因でした。
※ADHDには大きく3タイプ(「不注意型」「多動衝動型」「混合型」)あり、僕は「混合型」の多動・衝動性、優位タイプです。
あなたの「悩み」の正体は、この特性かもしれない
あなたが抱えているその悩み、もしかしたら、発達障害の「特性」が原因かもしれません。僕の経験を元に、4つの代表的な悩みと、その裏にある特性について解説します。
1.仕事が続かない
僕が15回以上も転職を繰り返した、最大の悩みです。「自分はなんて根性がないんだ」と責め続けましたが、その原因は複合的でした。
・単純作業でミスを連発する(不注意)
・複数の仕事を同時に頼まれると、おろそかになり、必ずどこかにミスが出る(ワーキングメモリーの弱さ)
・上司の指示の「裏」が読めず、見当違いなことをしてしまう(社会性の困難)
これらは全て、ADHDやASDの代表的な特性です。根性論では、どうにもならないことだったのです。
>【仕事が続かない】15回以上転職した僕が見つけた、長く働くための思考法
2.人間関係がうまくいかない
「なぜか、いつも孤立してしまう…」これも、僕がずっと抱えていた悩みでした。
・雑談の輪に首をすぐ突っ込みこじらす
・良かれと思って言った一言で、相手を怒らせてしまう
・飲み会のような、ガヤガヤした場所が異常に疲れる
これらは、相手の気持ちを察したり、その場の空気を読むのが苦手なASDの特性や、感覚過敏が原因で起こることがあります。
>【人間関係の悩み】職場で孤立しがちなあなたへ。僕が実践した3つの対策
3.人とのコミュニケーションが上手くいかない
「ちゃんとした会話が成り立たない」「相手が何を考えているか分からない」…僕も、今でもおしゃべりは好きですがコミュニケーションは苦手です。
・相手の話を聞かずに、自分の話ばかりしてしまう
・冗談や皮肉が通じず、言葉通りに受け取ってしまう
・話題をすぐ変え、相手を苛立たせる
これらも、社会的なコミュニケーションを司る脳の働きが、少しだけ他の人と違うASDの特性が関係しているかもしれません。
>【コミュニケーションの悩み】会話が続かない、人の気持ちが分からないあなたへ
4.ちょっとした事でイライラしてしまう
些細なことでイラついたりして、大切な人を傷つけてしまう。これも、僕が妻との関係で何度も経験した、辛い悩みでした。
・思ったことを、つい衝動的に口にしてしまう(衝動性)
・「普通はこうでしょ?」という、自分のルールを押し付けてしまう(こだわりの強さ)
・相手の気持ちに共感できず、冷たいと思われてしまう
これらは、ADHDの衝動性や、ASDの共感性の困難さが原因で起こることがあります。
>【ちょっとした事でイライラしてしまう】僕が人間関係を壊し続けた「怒り」の正体
僕のように、ASDとADHDの両方の特性を併せ持っている人も少なくありません。それを併発といいます。一説にはASDと診断された人の90%近くの人は他の発達障害を併発している言われています※。併発すると症状の出方がさらに多様となり、その人それぞれの特性となって現れます。
(※「Newton別冊 最新脳科学と行動心理学で発達障害を科学的に理解する」より)
大人の発達障害者たちが抱える悩み
僕がそうだったように、多くの大人の発達障害当事者は、職場で「なぜかうまくいかない」という、目に見えない壁にぶつかり続けます。
具体的には、こんな経験はありませんか?
- 上司との衝突:どうしても上司の指示の意図が汲み取れず、「使えない奴だ」と怒られたり、逆に正論で反論してしまい、関係がこじれてしまう。
- 職場での孤立:雑談の輪に入れず、気づけばいつも一人。社内の人間関係で浮いてしまい、仲間外れにされているような疎外感を感じる。
- 顧客とのトラブル:良かれと思って言った一言が、お客様を怒らせてしまう。マニュアル通りにしか対応できず、臨機応変な対応が求められる場面でパニックになる。
- 突然の離職:自分でも理由が分からない怒りやストレスが爆発し、突然「もう無理だ!」と会社を辞めてしまう。そして、後で激しく後悔する。
- 出社困難:度重なる失敗で自己肯定感が地の底まで落ち、「どうせ自分は何をやってもダメなんだ」と思い込み、朝、布団から出られなくなってしまう。
これらは、決してあなたの「甘え」や「性格」の問題ではありません。発達障害の特性が、社会の「普通」と衝突することで起こる、当然の帰結なのです。
だから、あなたは一人じゃない
どうでしょうか。もし、一つでも「自分のことだ」と感じたなら、あなたは決して一人ではありません。僕も、あなたと同じです。
そして、その「生きづらさ」の正体をはっきりと知ることが、新しい人生を始めるための、何より大切な第一歩になります。
次のステップへ
あなたの「なぜ?」に、答えが見つかるかもしれません。