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コラム:大人の発達障害の私と妻の「カサンドラ症候群」について

カサンドラ症候群画像

「経歴」のページでも触れているように現在の妻は過去の職場での社内恋愛の際に付き合った女性である。
妻は私が25歳頃から付き合い始め、32歳の時に結婚し現在43歳なので出会って18年間苦楽を共にしているパートナーである。
私より3歳年下で一般的な家庭の4人家族の長女として生まれ面倒見も良く、ご両親は健在で弟が一人いる。馴れ初めについては「経歴」にざっと記載しているが付き合いのきっかけは職場の研修担当と新人という典型的なパターンだ。結婚の際に子供を持つことについての有無については2人して話あっており嫁は「子供が欲しい」人で私はどちらかというと「子供は欲しくない」人であった。そのことについて結婚してから意見のすれ違いから何度か言い争いなどはあったが、結婚したあとも妻は私が子供を「嫌いで」ほしくないと感じていたようだ。妻にも何度か本音を話したが私の正直な気持ちは「子供が嫌いでほしくないのではなく、これからの日本で子供を育ていく事が大変なのは明白で。且つ自身もこれだけ転職過多であれば当然子供を不幸にさせてしまう可能性もあり、自分の事でも精一杯なのに到底子供など持てない」というのが正直な気持ちだった。

ただこの頃はまだ私が発達障害だとは知らなかった為、定型発達者との立場同士「子供を持つことについての考えの相違」ですれ違いや、言い争いをしていた。また妻曰く当時の私は「他人の気持ちを察してくれる事ができず」、ケンカの際にも「理論的に攻めて逃げ場をなくしたり」「相手を言い負かしたり」「私(妻)の意見を組んでくれなかったり」という事が多かったようだ。
このような夫婦喧嘩は定型発達の人もある程度経験している人も多いのではないだろうか。ましてや子供の問題ともなると男女間での考えの相違も当然出てくる可能性もある。
また発達障害がある夫はそれにもまして上記のような症状が顕著化しやすいのも特徴である。その為、何かの本で見たが発達障害がある夫婦はない夫婦に比べ離婚する確率が格段に上がるというのも頷けるのだ。

当然私たちも何度か夫婦喧嘩で離婚の危機になったが、なぜ現在まで離婚に至らなかったかというと1つ理由がある。それは夫婦喧嘩をした際に必ずどちらかが謝り「ケンカの原因を突き止めようと2人で話し合ったからだ。だいたい夫婦喧嘩というのは犬も食わないという通り、どうでもよい些細なことや話から展開する事が多かったりする。その為、ケンカした際はまず「どちらが原因を作ったのか?」を夫婦喧嘩が落ち着いてから2人で徹底的に話あい、「どうすればそれを回避できたか?」そしてこれが一番重要なのが、「必ず双方謝る」これを徹底したのである。そうする事によりだんだん2人のケンカの要因や原因がわかるようになり「この状況はまたケンカになるな」とか「これは前回と同じようなパターンだな」とかが分かるようになり、不用意な夫婦喧嘩が減るのである。
結婚した3組に1組は離婚する時代と言われるように、夫婦喧嘩で離婚する人は多いのが現状である。ただその場合往々にして「夫婦喧嘩で感情的になりそのまま離婚」というパターンが最も多いのではないだろうか・・・

そんなこんなで自分たちの努力で夫婦喧嘩は意図的に減らせることも分かったのである。
しかしそんな中でも1番離婚の危機に近かったケンカがあったのだが、それが「私の発達障害(主に自閉スペクトラム症(ASD))を起因」としたものであった。
その頃はちょうど世間が「集団的自衛権の安保法案可決間際」の次期であり、日本が集団的自衛権を持つ議論(というか議論などほぼしてないが)を国会でしておりデモが頻発していた時期だった。
私は毎日新聞をよみ政治や経済に興味を持っていた為、ちょうど世論が騒がしくなってきた時期に私も同様に国のあり方に疑問を持つと同時に強烈な不満を抱いていた。その強烈な不満が自閉スペクトラム症(ASD)特有の症状で現れそれを精鋭化させたのがSNSだった。いわゆるリベラルや左派と言われる人たちだ。

SNSで私と同じ考えを持つ赤の他人とフレンドになりその輪が広がりフレンドが増大していった。
SNSは同じ考えを持つもの同士集まりやすく、他者を排除し、自身達の思考が精鋭化され、ナショナリズム化しやすいという特徴がある。最近だとトランプに感化されたアメリカの保守層が議会を襲撃するという事件が目新しい。(今回の場合は日本での集団的自衛権の可決反対なのでせいぜい反対のデモが起きるぐらいでアメリカのトランプに影響された保守派による議会襲撃とは方向性が異なるが)そういったように当時の私は「周りが見えなくなり」SNSに斜向していくとともに周りの声(嫁の声や第三者の声)が届かなくなっていた。そんな状況で毎日政治の話題で自身の考えを一方的に嫁に話し、嫁の考えが違うと思えば「全否定する」。常に2人だけの夫婦生活で息つく暇もなくそのような状況に置かれたらどうだろうか?想像に容易い。
そして同じ政治思考で集まった仲間とも些細な事でケンカとなり、また美辞麗句を並べ友達に装ってくるフレンドが実はネトウヨのスパイだったりしてとにかく当時の私は色々な意味で「殺気だっており」「なぜ私の気持ちがわかってくれないのか?」という自己欲求ばかりとなってしまい「周りの誰も信じられなくなっていた」のである。
行き過ぎた私はホワイトハウスの当時のアメリカ大統領オバマ宛にメールで自らの考えを長文化し(集団的自衛権を日本に迫るなという意味あい) google翻訳してメール送信などをしたりした。まあいま思えば自己主張するのならホワイトハウスではなくCSISや在日米軍幹部あたりに送らないと意味がないのだがw

夫婦仲亀裂イメージ

そんな状況の為、当然、夫婦生活にも亀裂が走るようになり、嫁がパニック障害を発症してしまう。
嫁曰く電車に乗っている時に、猛烈な息切れと動悸でそれこそ「死ぬんではないか」という考えが頭全体をめぐるらしい。そして全身が動かなくなり、呼吸困難となってしまう(医者曰く実際死ぬことはないらしいが)。そんな状況で救急車などで病院に運ばれた時もあった。発達障害者とパニック障害者。今思えば修羅場である。私の発達障害の症状は嫁をここまで追い込んでいたのである。
幸い嫁は精神病院で処方された薬のおかげと私が根源となったSNSを辞めた事がきっかけでだいぶ症状が緩和できパニック障害が治まるようになっていった。
妻曰く当時は真剣に離婚を考えたらしい。ただ離婚に踏みとどまらなかった理由は、その状況でも私は妻を一方的に突き放さず、自身の原因は何なのかを真剣に自分で考えるとともに、妻の病院に毎回送り迎えをして心配をしてくれた事が妻の心の傷をすこしづつ癒していったという。

カサンドラ症候群は正式な病名ではないが、発達障害などの精神疾患をもつ家族や配偶者が、その発達障害特有の症状で悩み傷つき自身の心身にも影響を及ぼす症状の事をいうが、私たちも例外ではなくその苦労を味わってきたのである。やはり発達障害は自分だけの問題ではなく、近くにいる周りの人にも大きな影響を与えてしまうのである。

ただ当時の私もそうだったが嘘やちがっていてもいいから「私の意見や考えをまず受け止めてくれる人」がいれば私の気持ちも多少変化があったかもしれない。
やはり大人の発達障害者はそういった状況を客観的かつ冷静に判断する事が難しく。とにかく「周りが見えずに突き進みやすい傾向」になる、そしてあたかも自分の考えが「絶対」だと思い込み、他社を排除しようとする。たった1つ気持ちを受け止めてくれるだけでいいのだが、それが上手く相手に伝えられない。伝えても分かってもらえない。
そんなすれ違いが起こりやすい事を理解し「相手を思いやる気持ち」「相手の考えを尊重する気持ち」「そして自分の考えを一方的に押し付けない気持ち」が重要だと感じる。
※ただしオバマに送ったメールの内容については間違っていたとは今も思わない。

欧米では発達障害当事者だけでなく、そのパートナーや家族へのサポートも手厚く行われているという。やはり発達障害は当事者への対応だけでなく、周りの人も一緒となって治療やサポートを行う事が重要だ。特に日本はこういった所が断然遅れていると感じる。

子供の件にもどるが、私が発達障害と診断された今は妻も「やっぱり2人のままで良かったね」と言ってくれている。そして障害が分かった今は夫婦ケンカも殆どしなくなり、なにかあっても「しょうがないよね。発達障害だからね」とジョークを言いながら2人で楽しく過ごしている。
やはり発達障害をもつ当事者が自身の障害に気づかず、子育てを含め安定的な家族生活を営んでいくことは定型発達者よりも何倍も困難を伴うのではないだろうか・・・

私がもし定型発達でこのような苦悩の人生を歩んでいなければ子供を持てて、温かい家庭を築けたかもしれない・・・
そう考えると妻には本当に申し訳ない気持ちになると同時に、そんな私を今でも温かく支えてくれる妻に感謝の気持ちで一杯になるのである。

 

自閉スペクトラム症(ASD)の私が原因でカサンドラ症候群となってしまった妻が離婚を踏み止まり、それ乗り越えて本来の結婚生活を取り戻すまで

 

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