日課の新聞朝刊(東京新聞)を読んでいた所、三面記事の「障害者雇用 東京最下位」という記事が目に飛び込んできた。
障害者雇用 東京最下位 (東京新聞記事)
障害者雇用、東京は17年連続全国最下位 大企業に集中し、雇えぬ中小企業にペナルティーのいびつさ:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
企業に義務付けられた障害者雇用の割合「法定雇用率」を上回った企業は東京都が30.9%で全国最下位だったことが、厚生労働省の昨年調査で分かった。全国平均47%を大きく下回った。法定雇用率が2.3%(従来2.2%)に引き上げられてから3月で1年。企業の本社が多い東京の障害者雇用は大企業に集中し、中小企業では雇えていない。(山田晃史)
なんと驚きである。東京の障害者雇用率は全国最低の30.9%で17年連続とのことである。
東京の企業に雇われる障害者自体は全国で最も多い21万9千人だが、企業数では6.8%しかいない従業員1000人以上の大企業がこのうち75%を雇っているとの事だ。東京の企業全体での雇用率は2.09%で同じく全国最下位、大企業のみ法定雇用率を上回ったようだ。
簡単にいうと東京都の障害者雇用は大半が大企業に集中しており、日本全体の企業数で9割以上を占めている中小企業の殆どが障害者を雇用できておらず、格差が広がり障害者雇用制度が機能していない事になり、国の政策自体に疑問符が付いた形だ。
中小企業が障害者を雇用できていない要因は様々あるが、主に「大企業が比較的症状の軽い人を優先して採用してしまい、本当に配慮が必要な人が取り残されている」や「中小で雇うのは設備や人員的に厳しい」などがあるようだ。しかも前の私のコラム「精神障害者保健福祉手帳と障害者雇用について」でも述べたように大企業は障害者を専門に雇う「特例子会社」を設けていわば障害者を別に隔離させて「単純作業」や「簡易事務作業」をやらせる傾向にある為、本来の障害者自身のやりたい事や適性を伸ばした就労につなげられていないのが現状である。しかも東京での障害を持つ求職者のうち、就職できているのはそのうち3割程度で他7割は障害者雇用の就労にも就けていないのが現状らしい。
大企業は特例子会社をもうけ、障害者をすし詰め状態にして補助金をもらい、その他殆どの中小企業は障害者を雇用すらできていない...結局、国民の税金は障害者の為という偽旗のもと、巡り巡って一部の大企業ががっぽり補助金が入る仕組みなのである。大企業はさんざん内部留保を貯めておいて、更に障害者ビジネスで補助金をむしり取ろうとする。
結局、国が決めた障害者支援法を元にした障害者雇用制度も形だけとなり、企業間での弱肉強食が顕著となり補助金目当ての大企業参入が幅を利かせる状況となっている。一時期の生活保護ビジネスならぬ障害者雇用ビジネスが横行し、かたや資本や人的リソースの少ない中小企業は障害者を雇用すらできず1人当たり5万円の納付金を国に納めざるを得ないという企業間格差が生まれ、障害者雇用制度自体が歪んだ状況となっているのである。
いっそ障害者雇用制度など辞めて障害者も一般就労者と同様に採用し、社内の定型発達者への障害者教育をしっかりして、障害者も定型発達者も一緒に働ける職場にしてくれた方がまだいい。
海外などはそうではなかろうか。
しらべてみたらドイツ、フランス、韓国は日本と同じように法定雇用率制度をとっており、法定雇用率制度がない、アメリカ、イギリス、スウェーデンはリハビリテーション法やADA法、DDA法など独自の政策で行っているようである。(アメリカは州によって大きく異なる)
また興味深い事にイギリスでは日本と同様に障害者雇用を割り当てる「割り当て制度」が過去とられていたが、日本のように上手く機能しなかった為、廃止されおり、障害者関連の給付金や有期雇用に移行させるプログラム導入などの雇用対策が取られているようだ。
また高福祉国スウェーデンでは国営企業で障害者支援を行い、卒業後一般企業に就職する制度や、所得保障をはじめとした高い福祉サービスによって支えられている為、一般就労や一般就労しながら補助を受けたり、福祉施設での就労など様々な選択肢があるようだ。
また今回の日本の法定雇用率については20時間以上/週 勤務している人でないとカウントされていないという点も問題であろう。
当事者からすると発達障害の人が、定型発達者と同じように週5日8時間のフルタイムの就業をする事は精神的にも肉体的にもかなりハードルが高く、まして現在の複雑な就労状況で他者を察しながらマルチタスクが求められる職場環境では発達障害者が疲弊してしまい2次障害を引き起こし、引きこもりなどの社会問題化になっていることも目に見えても分かる事である。給与も低いとなればそもそもの差別であるし障害者雇用制度自体が破綻しているといわざるを得ない。
昨今のリモートワークをはじめとした、副業推進など就労状況や環境改善が叫ばれる中、週20時間以上の基準はもはや古すぎる基準であり、これからの時代に合わせた柔軟な働き方も取り入れるべきであろう。
そういった点も含め日本はまだ障害者雇用については諸外国に比べ赤ん坊のような制度である為、様々な問題や課題が出ている。ある程度成熟した制度になる為にはかなりの歳月がかかると思うが、私が切に願うのは定型発達者の目線で制度をつくるのではなく、障害者の目線から制度を考え、本人たちの置かれた状況や適性をしっかり見極めたうえで生きがいややりがいを元に、障害者一人一人がいきいきと就労に励めるように行政、福祉、障害者本人たちが多角的に話し合い、障害者雇用を含めた真の自立支援制度を社会全体で構築していってもらいたいと思うのである。
PS:4/12のニュースで障害者雇用率の拡大が厚労省で検討されているみたいだ。障害が原因でフルタイム出勤が厳しい発達障害者は多くいるとみられ、また私のように扶養内で働きたいと考えている障害者も多い事が予想されるため一刻も早く法整備してもらうよう切に願うばかりだ。
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