就労移行支援や就労継続支援などの就労支援事業所の体験入所も計4ヶ所体験し、自分の適性にあった分野の支援事業所なかなか見つからなかったり、適性はないが事業所自体や支援員の質がそうな事業所はあったというかたちで、体験入学してみた4か所の就労支援事業所は何とも惜しい結果であった。
そして最後にもう1カ所体験入所をお願いしていた就労継続支援B型事業所⑤があった為、体験入所前の面談に伺う予定となっていた。上記理由から気分はなかなか上がらなかったが、約束は守らないとならないので重い腰を上げて体験入所に行くことにした。
ここの事業所は浦和駅から徒歩で10~20分位の場所にある事業所で、事前に担当者(代表と支援員)2名とメールで何度かやり取りをさせてもらっていた。実際、体験前に代表と支援員にも対面で面談をさせていただいたが、30代中盤位の男性で2人とも第一印象もとても優しく、熱心に話を聞いてくれるイメージだった。前回体験を受けた4事業所とは違い、どうやら最近立ち上がった事業所らしく、スタッフは全部で4~5名ほどの少数精鋭で運営をまわしており、オンラインで実際のカリキュラムを教える講師は現在4~5名、生徒数(メンバー)は30~40名ほどの小規模事業所であった。
事業内容としては主に私の興味のある分野の「WEBデザイン」と「動画編集」でその他、一部事務作業的な内容の支援業務もあるようだった。事業所自体の広さは広くもなく狭くもなくちょうど良いといった広さだった。(理由は後述するがここはリモートメインで来所必須の事業所ではない為、必ずしも広くないといけないという訳では無いのだ)
代表との面談では他事業所と同様にまず、私の今までの就業経験を伝え、どのような障害を持っていてどのような事に困っているのか?を焦点に話合いがすすめられた。話好きの私が独りで話しをしまくっていても嫌な顔一つせず、話を聞いてくれしっかりと受け答えしてくれる。最初に受けた大手事業所の素人の様なベテラン支援員などとは雲泥の差だ。人は年齢ではなく「話し」をすれば大抵の「人となり」というものが分かるものだ。
終始おだやかに話がすすみ、体験入所の日取りが決まった。ここのカリキュラムは専門の先生=講師(第一線で活躍している、または活躍していたWEBデザイナーや動画クリエイター、エディターの講師在籍)によるリモートでの生ライブ講習を実施中との事。
※講義形式は主にソフトを使った操作や講師が用意したマニュアルを用いてのリモート講習
私は「これを」期待していたのだ。
どこぞの事業所のようにどっかで拾ってきたありきたりなチュートリアルを中身も知らない支援員が偉そうに生徒に丸投げしてただやらせるだけの事業所とは大きな違いだ。
こちらの事業所は厳密には就労移行支援ではなく、就労継続支援B型であり、雇用契約はなく、作業を行い対価として工賃を得る仕組みである。この事業所は交通費も条件に併せて一定の上限額まで支給され、私の懸案であった「障害福祉サービスの利用者負担額が発生するか否か」の確認もしてみたが、詳細は市区町村の福祉窓口確認となるが、週5日の参加予定であればおそらく「大丈夫(発生しない)」とのことでひとまず胸を撫でおろした。
B型の事業所は作業を行う事により「工賃」という形で報酬が得られる仕組みである。当事業所は平均月、3~5万円ほどの工賃との事であった。また詳しい事は分からないが、私が一番懸念していたサービス利用者自己負担額が発生しないという点だけクリアできればよかった。(ちなみに話は変るが一般的なB型事業所は障害度合いが重い方向けのイメージがあるが、リモートで受けてみた感想、そんなことは全くなく利用者のコミュニケーションにおいては定型発達者と見まがう人ばかりであった)
ここの面談で私は思いがけない提案を先方より受ける。
それは「入所後しばらくしてから、ある程度カリキュラムでスキルを身に着けて頂けたら是非、当事業所のスタッフ=サポーターとしてやってみては頂けないか?」という引き抜きの提案であった。
私は特段クリエイティブ系の実務経験があるわけでもなかったが、先方も私と話した感じ障害者には似つかわしくない「話し方」そして「人に教える事が好き」という私の特性を感じとったようだ。まだ立ち上がったばかりの事業所で、スタッフの数も限られ、これから生徒が増えていった場合、講師のカリキュラムだけでなく、潤滑油としての調整役としてカリキュラムの進行や、その他、補完的に各カリキュラムの基礎的スキルを教えられるサポーターやスタッフが必要だとの事。私は現在無職の為、妻の扶養の範囲内での勤務でも良ければ是非、喜んでお手伝いさせて頂きたい旨を伝えた。
早速、リモートでいくつかカリキュラムの体験を受けてみた。中には既にある程度進んでしまっているカリキュラムもあったが、受けてみた感想は「専門の講師のカリキュラムも分かりやすく、とても良かった」。事業所のスタッフと生徒との仲は良くアットホームな雰囲気で、講師と生徒も程よい緊張感で講義が受けられる。いままで働いてきた会社と比較すると「雇われの立場」と「支援を受ける立場」で形態が異なる為、純粋に比較はできないが、経験してきたどの職場よりも「空気感が良い」のである。まだ実際、通所や働いているわけではないので断定はできないが「人が皆優しく思いやりにあふれている」のである。それも一般的な事業所で良くある年配支援者と学生生徒の良くある「隙間風みたいなもの」が全くないのである。
またカリキュラム(講習)も講師により当然教え方や内容は異なるのだが、ちゃんとWEBデザインならWEBデザインの基礎から教えてくれる印象で、動画編集はエディターやクリエイターとして第一線で活躍されている講師が実際現場で利用しているアドビのプロ用ソフトを用いてライブで教えてくれる。もちろん分からない事があれば最後に講師に個別質問も可能だ。また「補習」にあたる「補講」というものも定期的に実施され、カリキュラムに乗り遅れた生徒用に基礎を振り返りで講習してくれるありがたいカリキュラムも用意されている。これからクリエイティブで副業やフリーランスを目指す発達障害の方にぴったりなのではないだろうか。
しかもそれが全て自宅にいながら「フルリモート」で受けられるのだ。
※注:居住自治体によりリモートの可否が決まる。
(注:役所に提出用の書面に通所日のサインをする必要がある為、最低1回/月、事業所に足を運ばなければならない点と、クリエイティブ系ソフトを利用する関係、自宅PCのスペックがある程度高くないと満足に動かないのでその点は注意が必要。希望者は事業所からPCの貸出も受けられる。私は自宅PCのCPUが未だにWindowsのCeleronで劇遅なのでcore-i5のPCを事業所からお借りしている。)
平日は午後の2時間のみのカリキュラムとなっており(午前中カリキュラムも若干あり)、土曜は午前,午後2時間づつ計4時間カリキュラムがある。基本的には週単位でのスケジュール告知で、講師の予定に合わせてスケジュールが組まれているが、1講師につき2hのおおよそ週1~2回のカリキュラム編成となっている。
そしてカリキュラムがない日は生徒は工賃が発生する作業をやったり、与えられた学習をやったり休みなど人それぞれだ。事業所自体の営業は平日と土曜の週6日間の稼働で日曜日のみ休みとなる。事前に入所前にオンラインでの通所日を週3日や週5日と自分で決めておいて、その通所日数に合わせて、週間スケージュールが決まった段階で自身が受けたいカリキュラムをあらかじめ決めておくのだ。
また生徒の体調次第での欠席や急なスケジュール変更にも対応可能で、常に本人の希望が尊重されており、心地よく臨機応変に対応してもらえる所もありがたい。逆に若干カリキュラムが少な目で少し物足りないくらいである。立ち上がったばかりの事業所なので全てが良いというわけではないが、細かい所では改善すべき点はあるものの発達障害を持った私としては総じて「かなり良い」イメージを持った。
やはり就労支援事業所は単に「企業名」や「知名度」「事業規模の大きさ」「駅から近い」など安易な条件で選ぶのではなく、ちゃんと体験してみて、その場の「生」の状況を肌で確認する事の重要性を身に染みて感じた。
発達障害が原因で40代で人生の絶望に立たされた私であったが、まだ40歳からでも遅くない。障害を知るきっかけとなり、障害に合った環境でのリハビリや学びの経験は私自身をいろいろな意味で成長させるはずだ。
私の心は固まった。
ここの事業所で「発達障害の症状に悩んだ社会人生活20数年の苦悩を一旦清算し、新たに第2の人生始めようと」決心するのであった。
(検討中であったひとつまえに体験した大宮にある就労移行支援事業所④は、その後、丁重にお断りをした。理由は後述する章のまとめで記載あり)
私の事業所選びのポイント
- 私の希望「今すぐの就職は必要ないこと」「後々、妻の扶養内で働きたいこと」「自身の興味や障害特性に合わせた就労支援を受けたい」の条件に現段階満たしている事業所である
- 現在の旬である動画編集やWEBデザインなど第一線の講師からカリキュラムが受けられる事
(フリーランスやクリエイティブ系の仕事を目指す人には適している、しかし必ずしも就職につなげられるかは本人のやる気次第。今ならまだ需要がある市場なのでスキル次第でチャンスはあるかも。但し何事にもそうだが自分から吸収してやろうと思わないと厳しい) - 発達障害に嬉しい「自分のペース」で、しかも自宅にいながら「フルリモート」でカリキュラム受講が可能であること。(但しあまり休むとカリキュラム自体ついていけなくなる可能性がある。フォローは可能)
- 週単位でカリキュラムスケジュールが決まり、一日午後2時間、最大でも4時間のカリキュラムなので、プライベートとの両立がしやすい事。
- 講師やスタッフと自身の相性が良好である事。
当然人間なので全くないとは言い切れないが、前述したように事業所全般で障害の理解がある為、苦痛になったり、逃げたしたりすることはなさそう。しかも皆本当に優しく、ちゃんと1人の人間として接してくれる、そして耳を傾けてくれる土壌がある。
PS:大人の発達障害者である私が発達障害判明後、自身の身の処し方を決めるでも述べたように、私の今までの社会人経験と、適性検査後の自身の適性とリスクを最小限に抑えるキーワード。
「クリエイティブ系」「同じ価値観同じ目標を持つ仲間」「自宅でもできる仕事」「自分の環境やペースで出来る仕事」「誰かに何かを教える仕事」。
なんと偶然であろうか、私が長い長い苦悩の仕事人生で最後の答えとしてはじき出したキーワードすべてに当てはまる理想的な就労支援事業所に体験入所 5度目で巡りあえた。
しかもスタッフのお誘いまで受けたのである。これは何かの暗示ではなかろうか・・・