私はミドル層の男性の発達障害者である。
なので主に発達障害をもつ男性当事者という目線で記事を書いているが、今回は女性の発達障害という違う観点から物事を述べてみたいと思う。
私が働く就労支援事業所でも、発達障害を持った多くの女性の方が利用されている。
私と同様、外見からは発達障害をお持ちであるとは思えぬ方が多く、定型発達者と見紛う人ばかりで、私と同様に社会生活に困難や苦労を持たれてきた方たちである。
そういった女性の発達障害を持つ方の困難や困り事、生きやすくするヒント、支援の在り方などについて2回にわたって一緒に考えてみようと思う。
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目次
・女性の発達障害も男性と同様に多く存在する
・女性の発達障害は周りからは見えづらい(表面化しづらい)
・女性の発達障害の困り事は思春期以降に顕著化してくる
・女性の発達障害ではガールズトークが苦手?
・女性のASDは性被害にあいやすい?
・日本社会に潜む性差的考えにより女性の発達障害者はさらに苦しむ
女性の発達障害も男性と同様に多く存在する
ひと昔まえなら発達障害というと子供のイメージが強く、最近になって大人になっても発達障害は治らず継続するという考え方を持つようになった。また大人の発達障害は男性が殆どというような風潮も一時期はあったが、ここ最近になり成人女性でも発達障害に苦しむ人は多くいるのではないかと考えられるようになってきた。
日本では大人の発達障害が広く知れ渡るようになった今だが、以前より日本では海外のような大規模な疫学的な調査は多く行われずに、人口に対しての割合や、各疾患の割合、地域別割合、男女比など疫学的な統計結果が十分とは言えない。
そんな中で女性も男性同様に発達障害(のような症状で)で苦しむ人が増え、日本女性学研究会 女性学年報 第 42 号によると、日本での発達障害の男女比は
ASDの発症率は人口比率で約1%。その男女比率は3~4:1と言われている。(以前は9:1と言われていた)。
ADHDの発症率は人口比率で2.5~3.5%(学童期は更に割合が増える)。男女比は1~2:1と示されている。
(国立精神・神経医療研究センターによるとADHDは診断される子どもの割合は学童期の子どもの3〜7%であり、男の子のほうが女の子より3-5倍多いと言われ、成人だと割合は2.5%ですが、男女比は1:1に近づきます)
ASDですら男女比9:1から3~4:1へ大きく変わり、ADHDに至っては1~2:1(または1:1)と男女比が殆ど変わらないという数値に変わっていることから、成人を含め女性の発達障害を持つ方も男性同様多く存在するとみられ、女性の発達障害にもスポットライトが当てられるようになってきている。
女性の発達障害は周りからは見えづらい(表面化しづらい)
では女性の発達障害は男性に比べてどう違うのだろう。
発達障害なので、男性同様、出生から脳機能の偏りや、脳機能の一部の機能低下などがあげられるのだが、その特性の出方に大きな違いが考えられる。
まず大きな違いは主にADHDに限っての話であるが、女性のADHDでは多動・衝動性が行動として表れにくく、問題行動が表面化しずらいという点。そして女性のADHDは不注意型症状が圧倒的に多いという事である。この多動・衝動型と不注意型の女性の発現率の違いやその理由などは調べても残念ながらよく分からなかったが、女性のADHDでは不注意型が圧倒的多数と多くの書籍やサイト情報にも載っている。
女性はまず男性に比べ幼少期より問題行動を起こしにくいという特性がある。そして男性に比べ対人関係やコミュニケーション能力が相対的に高く、社会性が高い為、ADHD特有の多動・衝動が目立ちにくいのである。
幼稚園や小学生時代を思い出してもらうと分かるのだが、落ち着きなく動き回っていたり、大声を上げたり、友達とケンカなどのトラブルを起こしやすかったりする事は多動・衝動の傾向なのだが、圧倒的に男児の方が多かったに違いない。そして成人になると、女性のADHDの多くは、男性の多動・衝動行動(例えば、状況を見ず思った事を口走りやすかったり、癇癪を起したり、衝動的に行動したり、貧乏ゆすりしたり、手足が落ち着かなかったりなど)に比べ、圧倒的に「おしゃべり」に振れた多動・衝動傾向が見られ、実際には「不注意」型の特性のあらわれ方の方が圧倒的に多く、物をなくしたり、物忘れや、物をちらかしたりする事が顕著化してくるのである。
続いてASDについては積極奇異型、受け身型、孤立型などがあるが、女性の場合は受け身型や孤立型が圧倒的に多いと言われており、ADHD同様、子供のころから障害特性による問題行動が目立ちにくく、周囲から気づいてもらいにくく、生きづらさを感じてしまうという事が多いようである。
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女性の発達障害の困り事は思春期以降に顕著化してくる
私の場合は発達障害の特性による困り事や生きづらさが実際、顕著化し、どうにもならなくなってきたのが30歳前後になってからと遅かったのだが、実際はその人の置かれた環境などに大きく左右されるであろう。
ただ特性のある女性においては、思春期以降に様々な困難に直面する人が多いようである。
思春期になると女性は男性に比べ心身において様々な変化が起こりやすくなります。特に思春期ではホルモンバランスが大きく変化し、体系的にいわゆる「女性型」の体系となってきて、合わせて生理現象なども始まり、頭痛、腹痛、精神的部分での不安や、怒りっぽさなど不安定さを増してきます。
こういった障害の有無問わず、女性においては大きな生理的変化により心身共に不安定になりやすい時期に、元々持っている発達障害の不安定な特性が合わさって、物事や生活がより困難になってくると思われるためです。
また尚且つ女性においては人の目を気にしやすく、「いい子でいなければならない」「しっかりしなければならない」というような対外的にも自己意識が高い人が多く、そういった気持ちと実際の障害+心身の変化のギャップにより、より困難度合いが増してくると考えられるのです。
思春期女子の学校生活
国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター
女性の発達障害ではガールズトークが苦手?
女性は男性に比べて集団で会話をする傾向がある。これは幼少期から成人に至るまで特に大きな変化はない。小学生でも女子同士集まっておしゃべりしている事は多い。その点、男性は女性に比べおしゃべりが好きではない人も多く、集団でのコミュニケーションを避け、独りでいたがる人も多い。女性は男性に比べ「共感力」が高く、ガールズトーク(同性同士でのコミュニケーション)を重視し、共感しながら話すという暗黙の世界がある。
しかし発達障害を持つ女性はいわばそのガールズトークが苦手な人が多いと思われる。
ガールズトークの多くは、恋愛や異性の話、男性アイドルやグループ、料理のおいしいお店や旅行、化粧品などの話、陰口、噂話などである。
ASDの人は相手の気持ちや状況を考えない言動の傾向がみられ、その他には、自分の興味のある事だけを話したり、思いついたことをそのまま話したり、会話が続かなかったり、その場では言ってはならない事をいってしまったり、曖昧な話や冗談も苦手だったりする傾向がある。
ガールズトークではそのグループ内だけで理解できる話になりやすく、異性がいる場では話さないような内容も多く出ます。また先に述べた、共感力が試される為、「その場の空気や話の内容を理解し、言ってよいことといけない事を冷静に判断し、相手の話や興味に合わせた共感を示す」というような相手の顔色や場の空気を意識しながらのガールズトークは、ASDの女性にとっては困難を極めると考えられるのです。
またガールズトークは目的や起承転結が決まっているわけではなく、急に話の内容が変わったり、それぞれが共感をしながら、一人ひとりが好きな事を話し始めたりと高度な内容になっていきやすいのも特徴の一つです。
その為、そういった話の展開にうまくついていけなかったり、その場にあった適切な話が出来なかったり、言ってはいけない事を言ってしまったり。共感力が乏しかたったり、そもそも人付き合いが嫌いだったりなどして、女性グループから仲間外れにされやすいという傾向にあります。
逆にADHDにおいては多動からくるおしゃべりに比べ、場の空気が読めなかったり、思いついたことをすぐ口にしたり、人の話を聞いていなかったり、ひとこと多かったり、その場を仕切りたがったりする特性が女性グループ内に亀裂を生みやすく、結果ASDと同様、仲間外れにされたり、いじめられたりしやすいと思われるのです。
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女性のASDは性被害にあいやすい?
発達障害をもつ人の障害特性として相手の気持ちが分からない、相手の発言の裏の意味を推し測れないなどがある。これはASD、ADHDともに言える事でもあるのだが、ASDの特性のある女性においてはその他にも羞恥心が弱いなども特性の一つとして挙げられます。
羞恥心が弱いとは警戒心が低いことと同じで、例えば人前で着替えたり、スカートを履いていても足を開いて座ったり、自分の外見をあまり気にしなかったり、異性との距離感が分からなかったりして、男性から女性はどのように見られるか、これは相手に下心があるのではないか?などの気持ちを読む力が弱いことが考えられます。
そういった羞恥心が弱く、警戒心の低下により不用意に異性からの性被害に合いやすいと考えられます。
またASDの女性は基本受け身タイプが多く、自己主張をあまりしません。そして相手が言った事をそのまま信じたり、相手が遊びのつもりで言った事をそのまま真に受けたりしてしまう傾向にあります。異性からの誘いに簡単についていってしまったり。異性から口だけの「好き」と言われてそれをそのまま信じてしまったりするような傾向もあるようです。
そして先述したように、相手の気持ちを推し測ったり、言葉の裏に隠された本音を読み取れなかったり、相手の表情や態度から気持ちを読み取る事が苦手な為、簡単な誘いについていってしまう、相手は遊びのつもりでも自分は本気になってしまう、相手のいいなりになってしまったり依存してしまう、断り切れずトラブルに巻き込まれる。などあらゆる性被害に合ってしまうリスクは高いと言えます。
逆にADHDの特性のある女性は、恋愛面などにおいては好奇心や多動・衝動特性から異性を次々と変えたり、衝動的に付き合ったりする事が多いようです。ASD同様、社会性が低く、相手の気持ちを汲み取れなかったり、移り気であったりするために、異性との関係においてトラブルになりやすいとも言えます。
カナダでの自閉症スペクトラム障害(ASD)と性暴力に関する調査では、 ASD の成人男女では、健常女性や男性に比べて 2 ~ 3 倍、性暴力が多く発生していた。また、少なくとも 1 回以上の性暴力被害に遭った割合については、 ASD の女性では78%、健常女性では47.4%であった。
~中略~
日本においても「発達障害者が健常者よりも性被害に遭いやすい可能性が高い」という指摘はできる。発達障害者への性暴力の実態に関する調査(PDF) 法務省
日本社会に潜む性差的考えにより女性の発達障害者はさらに苦しむ
日本社会ではいまでも考えられないほどの女性的偏見がはびこっています。世界のジェンダーギャップ指数でも日本は常に低いポジションにいます。これは裏を返せば男性の女性に対しての性差的偏見が今も根強く残っている事とも言えます。
またそういった社会的性差はあらゆる組織のTOPでも数値で表れています。女性国会議員の圧倒的少なさ、女性企業経営者や女性経営陣の圧倒的少なさ、女性医師の圧倒的少なさ、女性裁判官,女性弁護士の圧倒的少なさ、女性地方議員の圧倒的少なさ、女性教師の圧倒的少なさ。以上の様に日本の国政的、経営的、医療的、司法的、教育的、ありとあらゆる分野で女性進出は妨げられ、未だに虐げられています。それが日本の国力低下にも直結していると言えます。
日本は昔から「女性らしく」「女性だから~~」「女性はこうあるべき」などの価値観をもつ人が多く、女性に愛嬌や愛想、おしとやかさ、気配り上手、常に男性を立てる事などを求める旧来的型思考を持っている人が未だに多くいることに愕然とします。
そういった旧来的思考の性差的差別感や女性偏見が浸透している日本の現代社会では、その女性的役割を苦手とする発達の特性をもつ女性は、従来の障害特性と合わせ2重の苦しみを強いられることになります。家事全般を苦手とするADHDの女性や、気配りなどが苦手なASD女性にとっては死活問題となります。
また女性の問題は皆、隠したがり表面化しずらい為、そういった問題で苦しんでいる当事者の声や叫びはなかなか表に出てこないのも問題です。海外では各人がアピールする文化ですが、日本はあまり性被害を訴えたくない、また臭いものには蓋をするという風潮が強く、こういった社会的問題が表面化しづらく、社会的構造的問題を抱えている所も日本特有の問題と言えるでしょう。
こういった問題はやはり当事者たちが声を上げたり、社会全体で性差別は許さないといった毅然とした対応や考えを、定型発達者含め男女関係なくあらゆる人々が常に発信して、社会にまん延する性差や旧来的思考を改善していく必要があります。
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