大人の発達障害で自閉スペクトラム症(ASD)自閉スペクトラム症候群(旧アスペルガー症候群)の方のよくある傾向として「他人の気持ちを察するのが苦手」であったり「周りの状況を理解する事(空気を読むこと)が苦手」、「その周りの状況で自分の置かれた立場を客観的に考える事が苦手」というような事がよくある。
私も過去に何度かその状況でトラブルに発展した事があり、その状況について冷静に考えてみた。
例えば直近の職歴でヘルプデスクのオペレーターの研修中に辞職した例がまさにその例だ。
状況としては非常に分かりやすいので下記にまとめる。
・私が新人でベテランオペレーター(お局)に研修を受ける(ベテランオペレーター=お局)
・業務上のナレッジ(Q&Aのようなもの)はベテランオペレーターが作成したもの、その業務上のナレッジが「新人の立場としては非常に分かりづらい」と自らベテランオペレーターに発言
・入りたての新人に文句を言われ、気分を害したベテランオペレーターは私に対して研修中の発言を控えるように指摘される
・その指摘に対しても私はキレて最終的にベテランオペレーターと言い争いになり自ら辞職
細かい所は他にも要因があったりするがざっと説明するとこんな感じだ。
この事例で発達障害の私としては、研修を受ける身として「こんな分かりにくくて使いづらい業務ナレッジ(FAQ)は新人では使いこなせない(過去の職場環境ではもっと合理的に分かりやすいシステムがあった為)、その為、もっと新人でも使いやすく分かりやすい業務ナレッジ(FAQ)に変えてほしい」と純粋に思って発言したのだが、その前段階としてこんなくだりがあった。
研修中に研修生同士で「このナレッジってどう思う?使いづらくない?」「もう少しこうだったらいいですよね」「そうだよね。ここをもっとこうしてほしいよね」・・・こんなやり取りが研修生のなかであった、その為私は「研修生を代表して」上記の発言に至ったのだが、本来定型発達の方などであれば「申し訳ありませんが、ここのナレッジのここの部分がよくわからないのですが、どういう意味なのか教えていただけませんでしょうか?」、「ここのナレッジのここがわかりづらいので、もう少しこうして頂けると私たち新人も理解しやすのですが・・・」という表現をつかうだろう。しかし発達障害の私はそのままストレートに「この業務ナレッジは新人としてはわかりづらい」といってしまうのである。ましてや言われた相手は新人である。
この内容について「アスペルガー症候群」岡田尊司 著 を読んで非常に理解し易かったご紹介する。
~中略~ 企業社会の中で生きていくためには、矛盾したルールや一貫性に欠ける曖昧な環境に対しても、ある程度対応できるスキルを身に着ける必要がある。
アスペルガー症候群 岡田尊司 著 幻冬舎社
~中略~ 状況を繙(ひもと)いて、何が相手のそうした反応を招いたのかを考えていくことが大切だ。
その場合、鍵を握るのは、人間社会は、言葉のルールだけでなく、暗黙のルールによって運用されているということを学ばせる事である。
中略も含め、かいつまんで説明すると、発達障害者への配慮は企業にも課されているとはいえ、激しい企業同士の競争社会において全て完璧に求めるのは酷な話である。その為にも発達障害を持つ当人たちが「矛盾した事」や「一貫性に欠ける環境」の中に置かれてもある程度、対応出来るスキルが必要だと説いている。
例が非常に分かりやすかったが下記に示す
・ある相手に発達障害を持っている人が話しかける
・その話しかけた相手に「いまはそういう話をする時ではない」と言われてしまう
・しかし別の人がその人に話しかけた時は普通に話しているのである
・発達障害をもっている当人は「自分にだけ対応がちがう」とストレスを覚える
・ところが真相は発達障害を持った当人が話しかける際には何の断りもなく唐突に要件を切り出しており、相手に不快な印象を与えていた事に気づいていない。(別の人はしっかりと状況に配慮した話しかけ方をしている)
・総じて本人が「矛盾だ」「理不尽だ」と感じる出来事は、大抵その前の段階で自分の方が虎の尾っぽを踏んで原因を作っており、そのことに気づかずに相手の反応だけにこだわりトラブルに発展するという場合も少なくない。
・こういった例は第三者が指摘しないと本人は気付けないのである。
私の状況で考えると業務ナレッジは新人からベテランまで同様のものを使うが、私にとってみればそれが矛盾したルールであり、ベテランオペレーターの説明のわかりづらさが一過性に欠ける曖昧な環境なのである。新人用にもっとわかりやすい業務ナレッジを構築すべきという概念や、画一化した業務ナレッジを新人にも使わせるのであればそれを理解しやすいようにかみ砕いて説明したり分かりやすく教える研修担当のソフトパワーがあってしかるべきと一貫性を求めるのである。そもそもそういった「矛盾した事」や「一貫性に欠ける環境」に対応が出来ていないのは私の方なのである。
読者の皆さんも経験があるのではないだろうか。「なんで俺だけ」「なんで私だけ」「差別されているんではないか?」「私は嫌がらせを受けているのか?」そういった感情が浮かんでくるのではなかろうか。
しかし状況を繙いていくと多くは自身が原因をつくり、自身の脳の「勘違い」「思い込み」が原因でトラブルが起きるのである。
なのでもし同様の症状になってしまったら「なぜあの時そうなってしまったのか?」を自分自身で冷静に考えて原因を探ってみたり、逆に相手に「自分はこう感じてしまったのだが、本当の状況はどうであったか?」などを直接聞くのもよいかもしれない。そういった経験を積んでいくと最終的には「いまこの状況でこう発言すると、おそらくこう思われるのではないか?」「ここは自分ではこう感じるのだが、他の人はどう感じるのだろうか?また相手はどのようにとらえるだろうか?」という察しができトラブルも減らせるようになるのではなかろうか。
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