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㉖発達障害であるASDとADHDの併発により、様々な困難が増す私の例

分析イメージ

自己紹介ページ でも述べているが私は、自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如・多動症(ADHD)を併発している。

成人の「発達障害」が認知されるようになってきた現代では、発達障害の症状であるASDやADHD自体だんだん理解されるようになってきてネットでの情報や書籍ではそれらの症状についての詳しい情報を得る事ができるようになってきた。しかし私は前々からこういった情報に違和感を感じていた。

「ASDはこんな症状でこんな人」「ADHDはこんな症状でこんな人」「ASDに向く職業、ADHDに向く職業」という感じである。定型発達者からすると「ああ、こんな人私の近くにもいるなあ・・」「こんあ症状なら私もそういう傾向もあるなあ・・・」と感じる方も多いのではないだろうか。
ただこの世間一般に知られている情報には「大きな落とし穴」が存在する。

それは発達障害の各症状の多くは併発=重複する事である。

そういった世間一般に広まる情報や認識が、実は発達障害の当事者を苦しめているもう一つの要因である。


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目次

発達障害の症状が重複するとどうなるのか? 様々な困難が増す私の例

障害症状が重複する度合は人により千差万別で、症状の出方も人それぞれ異なる

障害症状の重複において、研究はまだ始まったばかり

障害症状で当事者をカテゴライズし分類するのではなく、発達障害を持つ人個人ひとりひとりの特性や悩みを聞いて対処する事が重要

「AS(自閉スペクトラム)」「ADH(注意欠如・多動)]と認知され「D(Disorder=障害)」がなくなる日は来るのか?

 


発達障害の症状が重複するとどうなるのか? 様々な困難が増す私の例

巷でよく目にする情報としては「ASD=対人やコミュニケーション障害、常同性、こだわりが強い」などであり「ADHD=不注意が多く、多動的であり、衝動性が伴う」あるといった内容だ。
ただ実は上記の症状の片方だけ発症している人というのは少なく、発達障害を持つ大半の方が程度の差はあれど重複または他の発達障害症状や精神障害症状などと併発している事をご存じであろうか。

私が読んだある書籍では、「発達障害(特にASDでは)を持つ患者の約9割が他の発達障害症状や精神障害症状との合併症を持つ」と書いてあり、その症状を放置すると社会生活がより困難となるとも書いてあるのだ。

では私の場合「仕事上の困難」を例に挙げて説明してみよう。

私の仕事上の困難例
・朝目覚めるが、障害特性により熟睡できず睡眠不足の状態で起床。慢性的睡眠不足の状態。(発達障害全般傾向)
・身支度など行うも、時間管理がスムーズにいかず、家を出る時間が迫り慌ててストレスを感じる(ASD傾向)
・何とかバスや電車に間に合うも「人混みに強いストレスを晒された状態」で通勤しなければならない、何とか満員の電車を乗り継ぎ会社に就くも精神的にヘトヘトな状態となる。(発達障害全般傾向)
・朝から社内は騒がしく、挨拶などをかわし、やるべき事を一生懸命考えているうちにまたストレスが溜まっていく(ASD傾向)
・息抜きの為、休憩エリアに行くも既に先約がおりストレスに(ADHD傾向)
・朝礼が始まり、社内説明が行われるこの際も落ち着かずドキドキしまたストレスを感じる。また自分が指されて話す機会を与えられないかワクワクしている別の自分もいる(ASD、ADHD両傾向)
・朝礼が終わり、仕事に取り掛かるも、次から次へ対処すべき仕事が舞い降り、どの仕事から優先させればよいか分からず戸惑う(ASD傾向)
・上司や同僚に相談せず自分で勝手に優先順位を決めて仕事に取り掛かるも、過剰なこだわりからその仕事を中々終わらせられない。仕事が多い場合に早めに相談して誰かに助けてもらうという発想が沸わかない、また自分でできるという過剰意識もあり(こだわりのASD、自意識過剰のADHD両傾向)
・そうこうしているうちに別の仕事でトラブルが発生し、対処をせざるを得なくなる。マルチタスクなど余裕だと言わんばかりに自分の感覚で2つの仕事を同時に行うも、詰めが甘くほころびが出始める(ADHD傾向)
・近くにいたAさんに「すいませんちょっと複数仕事は入り困ってしまったので手伝っていただけないでしょうか?」というも「ごめんなさい私、いま〇〇やってて手が離せないの」といわれてしまう。
・そうこうしているうちに3つ目の仕事が舞い降り、それも何とかこなせると妄想ししてしまう。しかし既に詰んでおりパンク状態となりお手上げになる。
・(仕事の見通しが甘く)自分で対処できなくなって、初めて上司や仲間に相談する顛末に・・・(ASD傾向)
・そして上司に「なんでもっと早めにだれかに相談しなかったんだ!」と叱られる。
・一方的に叱られるので、逆ギレして「Aさんに途中相談しましたが、手が離せないと言われました!一方的に決めつけないでください!第一、こんなに複数の状況を1人でやらなければならないのは組織上の問題ではないのでしょうか!」と持論を言い盾突く始末。(ADHDの衝動性傾向

というように起床した時点で既に障害特有の困り事が発生し、1日が終わるまでASD、ADHD特有の症状によりストレスを溜めていき、最後には出社拒否状態となるか感情が爆発するという状態になる。

また仕事上のコミュニケーションの部分でASDとADHDを併発するとどうなるのか例を挙げる。

私の仕事上のコミュニケーショントラブル例
例1:上司から「〇〇の仕事やっといて」と言われる
・頼まれた仕事で不明点がある為、聞いてみるも「〇〇のように上手くやっといて」と言われる
・自分なりに解釈し上手くやったつもりで終わらせ、上司に報告するも「上手くやってと言ったじゃないか!なんで余計な〇〇をする必要があるの!」と叱られる(ASD傾向)
・あいまいな指示内容を出したにも関わらず、自分の希望どおりにならない上司に怒りがこみ上げ、思ったままを言う「貴方の指示で上手くやってと言われ、自分なりに上手くやったつもりです。もし違うのであれば、指示を出す際にその点も含めちゃんと指示だししてもらえないと分かりません」と上司に盾突く。(ありのままに言ってしまうASD傾向)
・「そんなの言わなくても分かるだろ!」と上司が怒り出す。
・逆ギレされた為、こっちも怒りがこみ上げ「自分のミスを他人のせいにしないでください!そんなのちゃんと指示してもらわないと分かりません!」とこっちも言ってはいけない相手に言ってしまう。(ADHDの衝動傾向)

例2:会議において
ある議題を話合い、社内で今後どうしていくかを決めていく会議に参加した際の事
・担当が「〇〇について皆さんどう思われますか?」と参加者に意見を求める
・私が真っ先に問題を指摘して、みんなにわかってもらおうという意識が働き、相手の立場や気持ちを考えず「〇〇についてはダメだと思います。これはマニュアルもないし、周知したところで〇〇が問題となり皆に浸透されづらいです。もっとこれこれこうした方がいいのではないでしょうか!?」と担当者の気持ちや周りの空気も読まず、自分の意見を押しとおそうとする(ASD傾向)
・指摘された担当は当然、気分を害する。しかも結構痛い所を突かれたりするので、相手も若干ムキになる。相手も「きのやんさんの案は〇〇が抜けています。〇〇の為に〇〇するので、この方法がよいと思われます」と反論。
・指摘され返されたことに私は更にイラっとし「いや!〇〇さんの案だと〇〇という問題が起きます!その為、私の〇〇という方法の方がいいはずです」(こだわり優先のASDと衝動優先のADHD傾向)
・・・以下、2人の会話が白熱し、周りの人はおいていきぼりになり慌てた上司や第三者が「その件はいったん持ち帰り後で社内で決めよう。では他の議題に移ります」と方向修正を行うことに。


こんな感じである。

ここで純粋にASDだけ、純粋にADHDだけの人との違いを述べたい。

純粋にASDだけの人=通勤においては同様にストレスを感じる。出社後の仕事にいてはAという仕事にのめり込み、BやCの仕事が見えなくなる。強いこだわりから自分で勝手に解釈して仕事を進める傾向がありトラブルになるケースがある。また臨機応変に複数の事をやれないのでどんどん仕事が舞い降りるも本人は我関せずで、第三者が初めて問題に気づくパターンが多い。コミュニケーションにおいては「空気の読めない発言」や「周りの状況を考えない発言」をしがち、また本質を突いた事を言うため、相手を怒らせる事があるが、ADHDの衝動性はないので逆ギレしたり感情的になるこことはない為、大きな対人トラブルにはなりづらいが、「扱いづらい人」、「なんか嫌な人」と周りに思われがち。

純粋にADHDだけの人=通勤においては同様にストレスを感じる。出社後の仕事にいてはAという仕事を取り掛かり、同時にBとCもやってくるためそれも「さばける」と勘違いし、3つ同時に取り掛かるも、どれも中途半端でほころびが出始める。同時に複数漏れや、ミスが重なり、1人では修正できない状態になる。その時に初めて自分で気づき第三者に助けを求めるか、すべてを放り出して休憩にさっさといってしまう。不注意優位型のタイプはそれぞれの仕事で深刻なミスが起きやすくなり、問題が大きくなる傾向になる。また多動・衝動性優位のタイプはいわゆる感情的になりやすい為、上司の指摘に反論したり逆ギレしたりする。ただASDはない為、ある種「相手の気持ちを考えない」「空気の読めない」「嫌味的」な発言は少ない。

以上の違いがお分かりいただけだろうか?

私のパターンとADHDだけの人のパターンがほぼ同じじゃないか?と思う人もいると思うが、ASDを併発すると取り掛かった物事へのこだわりが優先してしまい、臨機応変に対応する事が困難となったり、相手の気持ちやその場の空気を読むことができないので相手にとって不快な一言を言いやすくなる為、物事の対処においても相手とのコミュニケーションにおいても支障が生じやすく困難が倍増するのである。

またADHDは飽き性で次から次へと興味の対象が移りやすいが、ASDとADHDが混合していると、移り気であるのは同じなのだが、やり始めると妙にこだわってやる事があり中々物事を終わらせられなかったり、そうかと思えばあっさり「飽き」が来てやっていたことを放り投げるという特性もある。

困り事イメージ



障害症状が重複する度合は人により千差万別で、症状の出方も人それぞれ異なる

このようにASDとADHDを併発(重複)する人は実は多いのである。ただその症状一つとっても発達障害を持つ当事者ひとりひとりASD、ADHDそれぞれの強さやあらわれ方、特性は違い、それがまた当人たちを苦しめる一因となっているのである。

先述したように一般的に知られているASDだけ、ADHDだけの特性を持つのではなく、それぞれの障害が複雑に絡み合い、人それぞれの濃淡は異なり、さらに特性の出方も異なるのである。
さらにASDでも受け身のタイプと私のような積極奇異型のタイプでも180度異なるし、ADHDでも不注意優位型と多動・衝動性優位型のADHDでは特性のあらわれ方が大きく異なるのである。

その為、併発している場合、就労や仕事上での困り事はそういったピュアな症状(ASD、ADHDの片方だけ)を持つ人に比べ格段に増すのである。

例えば同じASD、ADHDの症状が半々の割合の2人+上記のようなタイプが半々で発症している2人、計4人いたとしよう。

ASDが受け身タイプと積極奇異型だと困り事のあらわれ方が異なる、仕事で例えると受け身タイプ①は「アクションが遅く、こだわりもあり、指摘される事が多くなったりして自己肯定感が下がり、困り事が増す」一方、積極奇異型タイプ②の場合は「空気の読めない発言、場違いなひと事、やたら周りに介入したがる性格などから人間関係でトラブルになりやすく自己肯定感が増し、困り事が増す」。

ADHDにおいては不注意優生型タイプ③では仕事上で「ミスが起こりやすく、重要な作業でのミスが重なり職場の信頼を損ない、自己肯定感が下がり、困り事が増す」逆に多動・衝動優位型タイプ④では「興味の対象が次々変わり仕事に集中できなかったり、考えるより先に行動ししたり、逆ギレなど感情的になったりして、トラブルとなりやすく、結果、自己肯定感が下がり、困り事が増す」。

ASDとADHDが併発し、さらにそれぞれの障害特性タイプが異なるだけで、単純に4パターンに分かれるのである。それに双方が混合しあい、それぞれの症状(ASD、ADHDなど)の割合の違い、そしてそれぞれの特性タイプ(受け身、積極奇異型など)の濃淡、さらに遺伝、性格、生育環境、嗜好など様々な要因が複雑に絡み合い当人たちの障害症状の出方が異なってくるのである。

以上の事よりASDとADHDの併発により様々な障害特性タイプと濃淡、そしてその他の精神疾患などが複雑に絡み合い、当人たちの障害特性のあらわれ方は十人十色となり、生活上、困り事が倍増する事が理解いただけたであろう。


【労働者側】当事者が教える「発達障害の人(又は疑われる人)は仕事が続かない、仕事がうまくいかない」と嘆く前に、適職に就く為の最も大切な3つのステップ



障害症状の重複において、研究はまだ始まったばかり

発達障害研究の第一人者である「本田秀夫」精神医・医学博士はこういっています。

 

なぜ発達障害の特性の重複はなかなか理解されないのか。その背景として様々な要因が考えられますが、その一つに「研究が専門分化している」ということがあります。医学や心理学の研究者、特にアメリカの人達は自分の専門としている分野に特化した研究を行う傾向があります。
~中略~
ひとつの分野を深く掘り下げて研究するのはそれはそれでよいことです。
しかし結果として、重複している部分の報告は少なくなるという弊害も生まれているわけです。
もちろんアメリカや日本、そして他の国にも発達障害の重複を扱っている研究はあります。ただその数が少なく、その為、重複例への理解がなかなか広がらないというのが現状です。

 

発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち     本田秀夫 著  SB新書


ASDとADHDを男子と女子に例えた場合、男子と女子それぞれの専門研究者はいるものの、その両方を持つトランスジェンダーを研究する研究者が少なく、トランスジェンダーを持つ人々の困難や困り事が分かりにくいといったら分かりやすいでしょうか。人類には男と女しかいないと思われていたが、実は両方の特性をもつ人達がおり、マイノリティの中でもそういった特性を持った方がかなりの確率でいるのではないかと思われる事と発達障害は似たような感じです。しかも当人達はその人それぞれ自身のもつ障害特性の出方が異なり、周りの定型発達者にとってはそれらは見えづらくわかりづらいという事です。


障害症状で当事者をカテゴライズし分類するのではなく、発達障害を持つ人個人ひとりひとりの特性や悩みを聞いて対処する事が重要

以上の事から、発達障害(特にASDでは)を持つ人の9割近くが他の精神障害を併発すると言われる現代、「この人はASD」「この人はADHD」とカテゴライズし分類することに意味はなく、逆に発達障害を持つ当事者の障害特性をわかりづらくしており、間違った理解が進みやすい要因になってしまう事がお分かりいただけたでしょうか。

前述の男と女の話ではないですが、時代は変わり「男だから」「女だから」という考えではなく、両方の特性を持つトランスジェンダーなどLGBTQ=マイノリティという視点も含め「ひとりの人間」という大きなくくりで人間個人を見る必要がでてきた時代になったのと同じことです。

その為、発達障害を持つ当事者ひとりひとりの特性を把握、理解し、それぞれの悩みを聞いて個別に対処する事がなにより大切になるのです。私も就労支援施設で働いているときは「ASD、ADHD、両方の障害、統合失調症、パーソナリティ障害など」様々な障害をお持ちの利用者がいらっしゃいますが、利用者のそういった障害名を意識するのではなく「その人個人が持つ障害特性や困り事に目を向け対応する」ように心がけています


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発達障害が「AS(自閉スペクトラム)」「ADH(注意欠如・多動)]と認知され「D(Disorder=障害)」がなくなる日は来るのか?

発達障害は「脳機能の偏り」であるのだがその偏りが強いか弱いかは人によって異なる。これは突き詰めると、それぞれの人間を形成する人格や個性であるのだが、それが「障害」となってしまうのには理由があるのである。

じつはその「障害」も周りから理解されているうちは「AS(自閉スペクトラム)」「ADH(注意欠如・多動)」という単なる「症状や傾向」なのである

定型発達者の多数派が占める現代社会は、我々発達の偏りを持つ者の障害特性や困り事が理解されづらくなる。そうすると、そういった人達は困難が増し、自己肯定感が下がり「自分はダメな人間なんだ」と考えるようになる。そして仕事や社会生活上様々な困難を感じるようになり、二次障害を発症してしまう人もいる。仕事や社会生活上、困難を生じるという事は「障害=Disorder」が付いてしまい「AS」が「ASD」に、「ADH」が「ADHD」となってしまうのである。

どういうことかというと「脳機能の偏り」も社会生活上、困難を伴わず、自身の対応や周りの理解で対処出来ているうちは発達障害にならず、「~の傾向のある人」で済むのだが、その「脳機能の偏り」からくる困り事が、社会生活上、困難を伴うものになってしまうと「障害=Disorder」が付いてしまうのである。

ただ先述したようにマイノリティも当たり前の世の中となり、「異なる考え方」「異なるものの見方」「異なる発言」なども理解され、「確かにちょっとおかしいけど、そういうものの見方もあるよね」「そうか!そういう考え方もあるのか?確かに」「そういう特性を持った人達もいるよね」というような考えを周りが持つことにより、私たちの「障害=Disorder」が消え、「AS(自閉スペクトラム)」「ADH(注意欠如・多動)」の特性を持つ人。という見方に変わるのではないだろうか。
(※ただし障害特性からくる一般的に見て「好ましくない」症状は、当事者本人による自己認識と改善意識が当然必要となるわけだが・・・)

地球上にいる人間が全てだと思っていたら、実は全宇宙から見ると「地球の人間」はちっぽけな変わった種族だったというような皮肉な話なのかもしれない。


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