発達障害 関連書籍(当事者向け)

マイノリティー達


苦しむ大人の発達障害で大切な事、それは「己の発達障害を認める事」です。
全てはそこから始まります。その為にはまず専門医の診断を受ける必要があります。そして発達障害と診断された後は自分自身がその障害である「大人の発達障害を理解する」必要があります。

私は大人の発達障害の知識の殆どを書籍から得てます。もちろんネットの情報も参考にしますが、ネットや動画の情報などは玉石混交なので書籍には敵いません。ただ大人の発達障害の症状は人によって様々で困り事も複雑になる為、様々な情報を比較したり、自身の症状と照らし合わしたりして判断しております。そして情報収集はなるべく複数の情報(主に書籍)から得るように心がけてます。

ここで私が紹介する大人の発達障害関連のおすすめ書籍は、少なからず「大人の発達障害」(または大人の発達障害に関連する事柄)において専門家の視点や当事者の視点で障害をより詳しく、そして発達障害をお持ちの当事者やそれに関わる方に参考になる情報が載っているものを紹介しております。
この書籍たちが貴方の「生きやすさ」に少しでも貢献できることを願っています。

書籍イメージ

※こちらでおすすめする書籍は★の評価も含め私個人の評価であり、感想やとらえ方も読者によって異なります。また症状緩和の保証や改善を確約するものではなく、当ブログでは如何なる責任も負いかねる点ご了承ください。
※Kindle版ご希望の方は各書籍のページで「Kindle版(電子書籍版)」をお選び下さい。


大人の発達障害 きのやんのおすすめ書籍


アスペルガー症候群
■自閉スペクトラム症(ASD)自閉スペクトラム症(旧アスペルガー症候群)を知る為の入門書。
発達障害の診断後、私が最初に読んだ本。
私の記事「コラム:大人の発達障害者の私が人間社会の暗黙のルールを学ぶ」でも述べているが、例えば「認知機能の偏り」からくる社会性の欠如(矛盾した事や一過性に欠ける対応)によって生ずる様々なトラブルなど、自閉スペクトラム症(ASD)自閉スペクトラム症 (旧アスペルガー症候群)特有の仕組み症状や事例など分かりやすく体系的に説明されている書物である。自閉スペクトラム症(ASD)に限らず注意欠如・多動症(ADHD)の人も納得の箇所が多々あり、自分でも頷きながらスラスラと読める内容となっている。


発達障害に気づかない大人たち
■医師と発達障害の当事者という2つの視点から「大人の発達障害」を掘り下げた良書。
2010年発行と少し前の書であるが著者自身が注意欠如・多動症(ADHD)をお持ちで、発達障害を専門とする児童精神医学の第一人者が大人の発達障害について掘り下げた本。日本で「発達障害」が広く知られるだいぶ前に発売されたにも関わらず、医師と当事者という2つの視点から「発達障害」について説得力のある文章が光る良書。
障害の説明だけでなく注意点や治療法、サポート内容など多岐にわたる解説も参考になる。
また偉人の例を挙げデメリットだけでなく発達障害もメリットになりうる点も解説している事が当事者としても救われる。


発達障害を生きる NHKスペシャル取材班
NHKスペシャル 「発達障害 ~解明される未知の世界~」を元に書き下ろされた希望を持てる書
「発達障害」について多くの特集を組み放送してきた、NHKスペシャル取材班による著書。
NHKらしく客観的点視点での情報は説得力があり、発達障害をしらない定型発達者が読んでもとても「発達障害」を理解しやすい内容となっている。
私の記事「コラム:大人の発達障害者の私から見た「定型発達症候群」という考え方について」でも取り上げた「定型発達症候群」という考え方の記事は、発達障害はあくまで「少数派」の人たちであり、発達障害者から見ると「定型発達者」の方がある障害者ではないかと揶揄する記事は、当事者の私たちが読んで「まさにその通り!」と頷いてしまうほどの内容となっている。
その他、障害の特性の具体例を多く上げ、結びは発達障害でも「胸を張って生きていける」と前向きな気持ちにさせてくれる良書である。


発達障害
■10万部以上売れた、発達障害の第一人者による力書
著者は現精神科医と大学教授の肩書をもち、精神生理学専門で発達障害において第一人者である。
私のブログでも参考になる記事を多く取り上げさせていただいている。
本著書は世間の発達障害の認知に併せて、10万部も売れた書籍である。専門家ならではの鋭い視点や経験豊富な知識を元に、発達障害について具体的かつ犯罪の関係性など多角的な視点から障害を分析しており、当事者としてはとても興味を惹かれる内容となっている。
圧倒的な知識量、経験豊富な経歴、独自の視点での障害分析など専門家ならではの視点で「発達障害」に鋭く切り込む著者、これからも私のブログで著者の書籍は多く参考にさせていただくだろう。


誤解だらけの発達障害
■「発達障害がいかに誤解されやすいか」という第一人者による独自の切り込みで本質に迫る書
著者ならではの「発達障害がいかに誤解されやすい性質を持つか」にスポットをあてて、専門家である視点から様々な問題に切り込む内容となっている。
特に医療サイド側の精神科医でも誤った認識がまかり通っている事への指摘と危惧がなされており、発達障害について社会的な視点など広い視野から本障害を解き明かす様は、読者に説得力を持たせるであろう。


発達障害はなぜ誤診されるのか
■「誤診される発達障害」を具体的な例を挙げて警鐘をならす批評書
上記「誤解だらけの発達障害」の書籍よりさらに詳しく「発達障害が間違われやすく」あらゆる場面で誤解されている発達障害について、その原因やメカニズムを解き明かす書籍。
発達障害の診断の難しさやその複雑さ、二次障害に隠れてしまう性質や発達障害を診れる医師の不足問題、臨床試験の不足などあらゆる問題から発達障害の誤解を解く書物。


共感障害 話が通じないの正体
■特に女性の自閉スペクトラム症(ASD)などの「発達障害当事者」に読んでもらいたい書籍
自閉スペクトラム症(ASD)の当事者で企業経営者、AI研究をへて感性の違う脳の相互理解研究を行う専門家。感性コミュニケーションの専門家である著者が主に「共感障害(主に自閉スペクトラム症(ASD))」をテーマに自閉スペクトラム症(ASD)の特性や対処方法など様々な視点から書いた良書。男性脳、女性脳の相違観点や、大阪人や京都人の独特なコミュニケーション手法の違いなど目から鱗的な題材から始まり、注意欠如・多動症(ADHD)の比較や、自閉スペクトラム症(ASD)先進国アメリカとの違いなど、豊富な専門知識と広い雑学とがバランス良く構成された、「女性の専門家ならでは」の観点から発達障害に切り込んだ良書である。



発達障害のウソ 専門家、製薬会社、マスコミの罪を問う
賛否両論で読む者の力量が試される書
強烈なインパクトが標題の本書。週刊誌でも取り上げられ一時話題になった書籍。
著者は私と同じ歳で東大卒で米ロサンゼルスに国際本部を置く精神科医療監視団体で「市民の人権擁護の会」の日本支部代表の世話役をしている。過去に数多くの精神科医療機関の不正の摘発に携わってきた異色の経歴の持ち主だ。
私はタイトルに惹かれ、半ば「ジャケ買い」の状態で本書を読破したが、私の感想を端的に述べると「同意できる所とできない所が両方ある」というのが正直な感想だ。

本書は「発達障害」という障害自体に疑問符を投げかける内容から始まるが、著者が伝えたい内容は「精神科医療は脳の病気(障害)を断定できない領域」「その為、発達障害自体を断定できない」「うつ病というキャンペーンが過去にあり様々な投薬や診療内科が激増した」「患者に薬を飲ませる為の一大プロジェクトである」「発達障害もそのキャンペーンの後追い」「バックの製薬会社とそのスポンサーである医師、そしてメディアなどがタッグとなり煽り「市場」を開拓している事実」といったような内容だ。しかもこのコーナーで私のおすすめする書籍を書いた他の著者たちを公然と否定し、その著者(医師)宛てに製薬会社から渡った献金額まで公表する内容には正直吐き気すら覚える。(まあ製薬会社からの献金は第一人者の医師ともなればどの分野の医師でも受けていると思われるが)この書籍に関する私なりに感じた事や考えを述べると長くなるのでここでは割愛するが、「何事も1つの側面だけでなく他の意図があること」「物事には裏の意味もあること」を改めて考えさせられる書であった。物事は1つの方向からでなく様々な角度から見たほうが全体や本質が浮かび上がるという事である。

しかし私のように半世紀近く「発達障害であろう症状から」「生きずらさ」に悩んで「医療機関にて診断された人」にとっては、それは「意味のある事」であって、それを己自身が認め、対処していくことは人生を切り開く一つのヒントやポイントでもある。そして投薬は人により要不要はそれぞれだし、医者に言われたから一生そのまま飲み続けなければいけないというわけでもない(少なからず私は薬はなるべく飲みたくない)。その為、私は発達障害自体を否定をしたくはないし、逆にそればかりにとらわれて人生を見失ってはいけないとも強く思う。重要なのは医師に言われたまま薬を飲み続けるのではなく、その事実(診断)に対して自分がどう向き合い、傾向を理解し、起こりうる問題に自分でどう工夫し、周りの協力を得られるかでに尽きる。
著者もその点は明白に述べており、「障害を持つ当事者たち自分自身が人生の主体となってほしい」と言ってるとおり、この書は安易に「発達障害者」を全否定するのではなく、世の中の風潮や製薬会社と医療機関の闇、そしてメディアの在り方など、いま日本における社会的問題に一石を投じているのであり、我々障害をもつ当人たちを否定しているわけではない点が唯一救われる。
是非、一度読んでいただくことをお勧めする。


発達障害とどう向き合うか 自閉症、アスペルガー、ADHD生きづらさは克服できる
自ら自閉スペクトラム症(ASD)(アスペルガー症候群)を持つ人気発達障害カウンセラーの自伝を含めたハウツー本
幼少の頃の自閉症が交通事故を境に自閉スペクトラム症(ASD)となり、苦労した人生を歩み現在発達障害カウンセラーとして個人や各機関からの相談を受けている著者。当事者が書いた本だけあり同じ発達障害をもつ私が読んでいても「そうそう」とうなずく箇所も多く、医療従事者や専門家顔負けの知識に脱帽してしまうほど。また私が本ブログでも書いてある通り、自身の特性や傾向や特徴を洗い出して「自分の障害を客観的に見る」そして次につなげるという手法においては激しく同意するものである。

ただ残念なところとしては少々詰め込みすぎな感があり、発達障害の概要、チェックリスト、自伝、子供の発達障害について、大人の発達障害について、各種療法、ケーススタディなどかなり広範囲にわたる内容なので、説得力のある文章ではあるもののポイントがぶれてしまっているところ。
いずれにしても当事者や発達障害者と関わりのある人は一読の価値ある書である。



発達障害の原因と発症メカニズム 脳神経科学からみた予防、治療・療育の可能性
脳神経科学のスペシャリストによる専門書 発達障害の因子の驚くべき内容とは
(研究者向け書籍)
環境脳神経科学情報センター代表、首都大学東京客員教授という肩書を持つ著者(もう1人はこどもの脳プロジェクト、研究員)の長年の研究による発達障害のメカニズムや原因を探った書籍である。
読書してみての率直な感想は「かなり難しい内容ではあるが、誰もが知りたがる発達障害のメカニズムや根本的原因の真相に迫った価値ある書籍」で発達障害の入門書とは程遠く、多くは研究者や医師など専門家、また大学の研究論文など提出する学生向けの書籍だと感じた。

途中難解な図形などがでてくるが、著者はこの中で発達障害の原因は農薬や化学物質の過剰摂取によるものと見ており、背景にあるデータを示し、説得力のある内容で書かれている。また遺伝的要因が定説である発達障害において、そういった化学物質による影響で胎児の脳のニューロンやシナプスに影響を及ぼし環境的な要因が多くウェイトを占めるという論評にはとても興味深いものである。農薬使用量では世界第1位 韓国、第2位 日本。同順で発達障害者数も世界で1、2位というのが衝撃

日本は欧米に比べ統計情報が少なく、いわば発達障害においてここ数十年間、放置されてきた感がある為、対処できずに現在増加した「大人の発達障害」においても警鐘を鳴らすものである。
発達障害についてより深く詳しく専門的に調べたり勉強したりしたい人におすすめの書籍である。


あなたの隣の発達障害
発達障害の専門家によって発達障害を「客観的」かつ「わかりやすく」「合理的」に書いた本
著者は主に子どものこころを専門とする医学教室教授であり病院の診断部所であり、営利法人の代表理事でもある。臨床経験もあり学術論文も手掛ける専門家である。本書は自署で「当事者用」の本「発達障害生きづらさを抱える少数派の「種族」たち」とは対照的で「他者用」の視点で書かれた専門書であるが、適宜、ケーススタディなどを交えながら発達障害の知識をある程度持ち合わせえた当事者が読んでも「知らなかったこと」や「参考となること」が書かれた良書である。

発達障害では遺伝的要素にばかり目がいってしまうが、実は「育ち方」で社会適応の度合いが変化してきたり、社会適応に必要なのは「自立スキル(自分の能力の限界を知ることその範囲で行うスキル)」と「ソーシャルスキル(自分の能力を超える場合に他者に相談できるスキル)」が必要と説いており、正に社会にでてつまづく人の状況を的確かつ合理的かつ分かりやすく説いている本書の内容には感心を示すとおもに同意の連続である。

重要な部分は「特性に合わせた環境選択(会社や組織)」が重要であり、特性に合わないことを強いられるとにより、深刻な二次障害になる危険性を説いている。という点や発達障害者は実は定型発達者より共感力があったり、現代社会は合理性が求められ排他的概念もいまだ多いため発達障害のひとには暮らしにくいという内容、定型発達者(マジョリティ)が発達障害者(マイノリティを)に対して排他的になるのは「定型発達者(マジョリティ)」に属する大多数が「発達障害(マイノリティ)」のことを良くわからず漠然と不安に感じている為そのような心理が働きやすいとも説いている。

また非常に同意できた箇所は、日本の労働では「労働力の提供=仕事の対価」だけでなく「スキルアップやマネジメント」など仕事の対価とは別の要素を求める傾向が強く、そのいわば「向上するノルマ」に発達障害者の人たちは耐えきれなくなってしまう。という部分である。
終身雇用が終わりを告げ海外のようなジョブ型雇用=中途採用が当たり前の現代にも関わらず、日本の労働市場は上記の旧来型の終身雇用型日本企業の典型である「会社に尽くす」、「仕事以上のものを求める」のはナンセンスであり、もしそのような会社であればそういう環境(仕事のみ遂行を求められる海外的視点の会社)に自ら進む(転職など)も選択肢として提示していることはその通りだと思う。
発達障害者と関わり合いを持つ人だけでなく、発達障害の当事者にも強く読んでいただきたいと思わせる書籍である。


発達障害チェックシート
自身が発達障害かもしれないと思っている方や、障害の各特性による対処方法などを学びたい方向けの書籍
本書はどちらかというと発達障害と診断される前に自身が「もしかしたら自分は発達障害かもしれない」と感じている方や、周りで発達障害と思われる人の傾向や対処方法などを学びたい方に最適な書籍だと思われる。

過去にこちらのコーナーで紹介している「マンガでわかるアスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド」の同一著者でもある。
本書の目的は「発達障害か否か」を判断するのではなく、自身が持つ発達障害と思われる様々な特性に対してその根拠や対処方法を学び、生きづらさの解消につなげる事を目的としている。
非常にわかりやすい文章と読みやすい文字の大きさ、そしてイラストを交えた実例をあげており、その原因や対処方法をわかりやすく説いているのが好感を持てる。

通常の発達障害に関する書籍は「ケーススタディ」を数例上げて対策などを述べているが本書はそのケーススタディが全体の9割以上を占める内容となっている。そのため発達障害の困りごとほとんどの実例を網羅しているといっても過言でないほどだ。
自分や身近な人で「発達障害かも?」と感じるのであればまず最初に手にしていただきたい書籍の1つである。



オトナの発達障害大図解  自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)の基礎知識から社会復帰の方法まで
発達障害やうつ病などの精神疾患で休職をしている方に読んでもらいたい書籍
本書は発達障害などが疑われる精神疾患で休職した人が「リワークプログラム(復職支援プログラム)」を通して社会復帰を目指すためのガイド書籍的な内容となっている。

発達障害の概要説明から仕事上での障害特有のケーススタディと解決方法、リワークプログラムの内容、実例、環境調整方法など具体例を挙げ、マンガを交えた構成となっており非常にわかりやすい内容となっている。特にケーススタディではよく起こりそうなトラブルに対しての解決方法が理論的かつ詳細にわたりわかりやすく書かれている為、まさにその状況で困っている当事者には助け船となろう。ただ1点注文点を挙げるとすれば「リワークプログラム」について詳しく書かれれているものの、そのリワークプログラムがどこで「受けられるのか?」「どのような機関をたずねればいいのか?」がほとんど書かれていない為、読者としては戸惑いが生じてしまう。その為、ネットの情報と合わせて調べる必要がある。
上記を差し引いても発達障害においてこのような観点(リワークプログラム的視点)で書かれた書籍はまだまだ少数な為、発達障害と思しき状況で仕事を休職している人には強くおすすめしたい書籍である。



新版 障害者の経済学
「障害者」及び「障害福祉」を経済学の「なぜ?」という視点でとらえる新感覚本
今回の書籍は発達障害に限定した内容ではなく、経済学の専門家視点で障害福祉を「外側にいる人(一般の方)」向けに解き明かす面白い視点の書籍だ。
障害者関連の書籍は一般的には「当事者目線」や「医療関係者の目線」「研究者や専門家の目線」「福祉関係者の目線」など「内側にいる人々」目線で書かれた本が多いが、経済学者が「障害者(障害福祉)」を「外側にいる人々(一般人)」向けに経済学的視点で論ずる内容は興味がある。
本書は障害者や障害福祉を善悪という概念を取っ払い「なぜ?」という疑問を起点として、社会経済的な「冷静」「中立」「一般化」という視点で冷静に分析されていて「障害者だから」「障害者福祉だから善良な行い」というような「規定概念や先入観のある考えではなく」障害者の置かれた状況やその社会的仕組み、障害福祉事業、他国の例、法律関連、障害者雇用、親の教育、障害者教育、優生思想、偏見、犯罪などを経済学的な多角的観点から冷静かつ中立的に論し、そこから浮かび上がる課題を読者に突きつける力書である。
「障害者への対応は善行でおこなうもの」「障害者福祉はこういうもの」「障害者とは守るべきもの」そういった先入観から読み始めると、出鼻をくじかれるはずだ。
障害者を生み出すのは私たち「障害者」ではなくわれわれを取り巻く「社会そのもの」であり、異者を排除し、のけ者としようとする人間本来の性が根底にある事を強く考えさせられる書籍でもある。



発達障害者支援法ガイドブック (法律についてのガイドブックである為、評価は無評価とします)
日本で初めて「発達障害者」というものが法律で認知され、我々発達障害者支援のスタートラインにたつガイドブック
かれこれ約20年程前に成立した「発達障害支援法」全般においてのガイドブックである。
従来、日本では障害者の概念が身体障害や知的障害、一部の自閉症や統合失調症などの精神障害にかぎられ発達障害においては日本では認知されずにきたが、この発達障害支援法は発達障害を持っているがゆえに法制度の支援の網からこぼれ落ちる人々(主に子供に障害をお持ちの親御様)達やそれを取り巻く周りの方々の支援が国会議員に届き、与野党を含んだ超党派からなる「発達障害者の支援を考える議員連盟」が動き成立させた議員立法だ。
正に見えざる障害であった為、その存在自体が見過ごされてきた発達障害ではあるが、当事者を取り巻く環境はほかの障害者達と同様に困難を極めるものであり、周りの認知と支援が必要であるがために日本での成立も遅すぎたと言わざるを得ない。特にこの法律は発達障害の支援において様々な事が書かれた啓発的内容でありある種の法的拘束力はもたないが、この支援法が成立した事で子供から大人、そして就労支援に至るまで長期的な視野による包括的な支援が見込まれる内容となっている。
特にこの支援法の大事な考えとしては「子供のころからの早期発見」そして「適切な教育を施す」ことによりこの障害が緩和され、最終的に自立した人生を送れることを目的としている。すなわち支援の段階で税金という形で投入されるが、それは長い目で見れば最終的には当事者達は国の支援対象から外れ、巡り巡って自ら労働者として国に納税をおさめられるようになる。そういった障害者が自立して生活できるようにする事で納税義務を果たしてもらうという思惑もあるようだ。
内容は「障害の概念」「障害者の現状」「障害児の課題」「支援法で定められる事」「支援体制作り」「早期発見と療育」「教育機関での取り組みや支援」「就労支援の意義」「生活支援」「医療機関の支援」「家族への支援」「支援センター」「人権擁護」「専門家教育」「社会的啓発」などを題材に、この本は発達障害の当事者から発達障害者にかかわるすべての方に読んでいただきたい書籍である。


5 out of 5 stars (5 / 5)

大人のアスペルガー ビジネスシーン別 会話メソッド
職場でのコミュニケーショントラブルで悩むすべての方へ読んでいただきたい書籍
まずこの書籍を読んでの感想が「これは私の事を言っている書籍だ」と感じた事である。
本書では旧アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症(ASD)=自閉症スペクトラム障害)の積極奇異型と受動型の2タイプに分け、職場でのコミュニケーション障害を症例をあげて対策方法を図解を入れてわかりやすく説明している。
私は積極奇異型の旧アスペルガー症候群なので、本書で紹介するほとんどのパターンが当てはまり、まさに私そのものを書いているようでありとて興味深かった。特に相手の気持ちが分からず発言したり、思ったことをそのまま発言したり、自分で言いたい事だけ言ったりしてトラブルになる事は今まで日常茶飯事であった。まさに今までの社会人生活での原因がこの自閉スペクトラム症(ASD)特有の言動にあり、本書ではその対策例(気持ちの持ち方)や対処方法を解説している。もっとはやく本書と巡り合いたかったと思ったと同時に、なんでこの社会は(コミュニケーションをとるのが)こんなにも面倒で大変なんだろうと思ってしまう。
ただ難しいのは気持ちの問題ですぐ改善できるわけではなく、今でも本書に書かれれているような症例で自分自身で後悔する事は多々ある為、気づいたレベルで当事者や上司に「障害により(それ)に至った理由とお詫び」をするようにして、自分自身が働き易い職場環境となるように努めている。
職場で特にコミュニケーションから人と衝突したり、悩んだり、周りの人は普通なのに自分だけ浮いていたり、避けられたり、からかわれたりするような感覚のある人は是非読んでほしい書籍である。



4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)

事例でわかる思春期・おとなの自閉スペクトラム症 当事者・家族の自己理解ガイド
自閉スペクトラム症(ASD)(自閉スペクトラム症=旧:アスペルガー症候群)で生きづらさを抱えている人全員に読んでいただきたい書籍
本書は臨床心理士で小児発達が専門の2人による共同書籍であるが、思春期や大人の発達障害者たちの事例にもページを割き自閉スペクトラム症(ASD)当事者たちが障害特性と向き合い、どのようにしていけば前向きに生きていけるかをテーマとした内容だ。
自閉スペクトラム症(ASD)について深く掘り下げ、当人たちがその障害と向き合い、その障害特性を理解し、特性と環境をあわせることにより様々な困難を乗り越えていく過程をケーススタディを交えて解説しており非常に読み応えのある内容となっている。
私も持つ自閉スペクトラム症(ASD)は発達障害の中でも薬の治療方法がなく、脳のメカニズムなどもまだ解明されておらず特に職場や人間同士のコミュニケーションに困難を伴いやすい障害である。その自閉スペクトラム症(ASD)を臨床心理の観点からどのように対処していくかを論理的かつ体系的に説明している点はとても参考になる。
また様々な症例をケーススタディで説明しているがどれもとても信ぴょう性があり、当人たちの困難が手に取るようにわかる内容となっている。そんな彼ら彼女らが困難を抱えながらも、支援者のもと自らの力で、その困難を乗り越えていく姿に感動と勇気を与えてくれるものである。



4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)

発達障害  生きづらさを抱える少数派の「種族」たち
■ASDやADHDなどの重複をメインテーマに、その症状を抱える当事者に対処方法や環境調整方法を伝授する良書
著者は主に子どものこころを専門とする医学教室教授であり病院の診断部所であり、営利法人の代表理事でもある。臨床経験もあり学術論文も手掛ける発達障害の専門家である本田秀夫氏の書籍である。
現在、書店などで発売されている発達障害における本ではASDやADHD、LDなどの発達障害の説明はあるものの、それが重複してあらわれ、重複することにより様々な問題や困難が増す事を詳細に謎解く書籍は私は未だかつて出会った事がない。私自身もそうであるように発達障害の症状が重複(併発)する事により、自身が社会生活を行う上で様々な問題が引き起こされてしまい、物事が複雑化してしまうという事がある。そういった内容に例を挙げ、詳しく説明し、対処方法や環境調整方法を精神科医として解説している事に安心感を与える内容となっている。
また裏を返せば発達障害も自己理解と自己対処、周りの理解が得られるなど、環境調整がなされればそれは当事者にとっては「障害」ではなく単なる「傾向」であったり「症状」と捉えられる。といった内容は当事者にとって励まされものである。
「発達障害とはどういったものであるか」「当事者たちの症状の重複によりどのような困り事が生ずるのか」「それに対しての対処方法や環境調整の方法」など知りたい方に一度読んで頂きたい書籍である。




5 out of 5 stars (5 / 5)

リワーク専門の心療内科の先生に「働きながら発達障害と上手に付き合う方法」を聞いてみました
■発達障害当事者とその当事者に関わる登場人物の人生がそれぞれ絡み合い、「リワーク」をテーマにそれぞれの人々に一筋の光をともしていく小説のような新感覚ストーリーの発達障害解説書。
本書は都内でクリニックを行っており精神科医、日本うつ病学会双極性障害委員会フェローである亀廣聡氏と作家で六代目桂分枝氏の弟子である夏川立也氏の共同書籍である。
主役であり発達障害を抱える20代の男性会社員の日常生活から始まり、その主役と関わる妻、上司、医師、MR担当とその部下など登場人物がそれぞれ「発達障害」といいう大きなテーマに飲み込まれ、悪戦苦闘しながら物語がひとつの光に向かって進んでいくという、とても斬新かつユーモラスな内容を奏でる物語となっている。
途中、妻のカサンドラ症候群や上司の無理解、発達障害の誤診や薬の負の面など、マイナスの面にも容赦なくスポットが当てられるが、最終的には薬に頼るのではなく自分の意思と周りの理解によって主人公含めた、登場人物たちが新しい未来をひらいていくというストーリー展開に胸を熱くすると共に、私自身そういった治療方法(服薬に頼らず自らの力と周りの理解で対処していく)を実践している張本人であり、激しく同意できる内容となっている。
また物語に登場する「亀廣聡」医師の面白い人柄が物語にスパイスとして効いており、小気味よく読める書籍となっている。
発達障害当事者だけでなく、周りの家族、また会社の経営者や人事などマネジメント層にも一読して頂きたい書籍である。





5 out of 5 stars (5 / 5)

女性のための発達障害の基礎知識 会社や学校に行けなくなる前に知っておきたい14章

■発達の特性を持つ全ての女性に読んで頂きたい書籍
私は男性の発達障害者であるが、女性の発達障害とはどういうものなのか?という興味があり本書を手に取ってみた。読み終えた感想としては女性も男性と同じように、発達の特性がある人は苦しんでいる事がよくわかる内容となっている。また女性の発達障害は男性の発達障害とはまた異なった部分での困り事や、女性特有の置かれた立場や症状からさらに困り事が増すことも理解できた。
また女性は男性とは違い、同性のグループでのコミュニケーションを図る傾向があり、そういった女性特有の同性同士のコミュニケーション(いわゆるガールズトーク)において、ASD、ADHDの特性がある女性は適切な対応やコミュニケーションが図れず、疎外されやすいこともこの女性の発達障害の社会的課題の一つとして根深い問題を提起している。

そして女性は男性の当事者よりも障害による困り事が表面化しずらく、また二次障害なども内向化しやすい性質から、諸問題が社会表面化しづらいという傾向がある。現代社会において今以上に女性の発達障害を持つ方の理解や、行き届いた包括的支援が早期に実現する事を願ってやまない。

発達の特性で困っている女性、当事者のご家族の方などに積極的に読んで頂きたい書籍である。





5 out of 5 stars (5 / 5)

アスペルガー症候群がわかる本

■ASDの人(またはその傾向がある)は一度読んでみて頂きたい書籍
DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)からASD(自閉スペクトラム症、旧広汎性発達障害)に内包されたアスペルガー症候群についての解説書である。

スウェーデンの精神医学博士兼教授であり編集者でもある著者の書籍で初版が2003年と古いが、現在のASDの中核的症状である旧アスペルガー症候群についてより詳しく掘り下げている専門書である。
ただ専門書といっても研究者や学術者向けではなく、途中専門的な内容にも多く触れられるが、ある程度、発達障害やASDを理解している方向けに総じて分かりやすい内容となっている。初心者向けの書籍ではない。
現在のASD=自閉スペクトラム症と統合する前である、アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症それぞれが独立して存在されると考えられていた時に出版された書籍の為、現在のDSM5でASD(自閉スペクトラム症)に統一された今読むと、過去版のDSM理解がない方は若干の混乱を招く内容となっている。

まず定義からはじまり、発生率、小児期,思春期の症状、併発する精神障害,社会障害、背景因子、認知神経心理学、診断と検査、優れた能力、成人症状、介入,治療法、相談機関先、症例紹介など、旧アスペルガー症候群をこれまでかと掘り下げる内容となっており、同じ障害を持つ私としては何度もうなずきと感心をもって読み進めた。

また面白かった内容としては「アスペルガー症候群の人は老けにくい」「言語性IQが高く動作性IQが低い傾向にあり、自分では天才なのかバカなのかわからなかったり」また「極端な自己中心性」や「入浴やシャワーを嫌がる」「他人の言動や外見に就いて鋭い指摘をする一方、自分の行動について他人から言われると一切を否定し、傷つきやすい」「常識のなさ」「不謹慎」見た目は常人に見えるのに「奇人」「変人」・・・そういった内容は正に「そうだな」と笑いながら読んでいた自分もまた「奇人、変人」なのである(笑)。

上記は本書のほんの一部を切り取ったまでであるが、先にも述べた通り充実した内容で書かれている為、医師の診断でASD、またはそうかもしれないと言われた方や、周りでちょっと「おかしいかも」という人がいて困っている人がいたら是非読んで頂きたい書籍である。


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