大人の発達障害者の私の視点で観るNETFLIXドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」Part②

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とうとうNETFLIXドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(韓国題名:おかしな弁護士ウ・ヨンウ)シーズン1 全16話が終わってしまった。

Part①でも述べたが本ドラマは、登場人物は私と同じ自閉スペクトラム症(ASD)(自閉症スペクトラム障害)を抱えて生きるパク・ウンビン演じる新米女性弁護士ウ・ヨンウで、法廷や私生活でさまざまな壁に立ち向かい、それを乗り越えていくハートフルドラマである。
過去、発達障害者を題材とした映画はハリウッド映画の「レインマン」をはじめいくつか観てきたけど、サヴァン症候群を持つ自閉スペクトラム症(自閉症は自閉スペクトラム症に内包される)の主人公が弁護士という設定で多様な要素を含みながらコメディータッチで描き、観るものを惹きつける本ドラマは新たなジャンルを確立したといってもいいであろう。
第1話から視聴率を軒並み伸ばしていき、最終話ではなんと17%(サブスクの動画サービスでこの視聴率は尋常でない)をたたき出すというシンドロームを巻き起こした本作品もまた、今の海外ドラマでよく使われる手法である1話完結であるが、テーマとなるストーリーは最終話まで続き、最後まで観客を飽きさせない構成は今のサブスクリプション全盛の常套手段の1つといえる。

多くの定型発達者である観客が感情移入してしまいここまで「ハマる」映画やドラマは、監督や脚本、演技指導、役者の演技力などの要素も非常に大きいが、私は定型発達者である多くの視聴者が無意識に発達障害をもつ主人公ウ・ヨンウに自らを重ねウ・ヨンウと共に苦悩したり、喜んだり、悲しんだり、ドキドキしたりという追体験ができた為ではないかと思う。ではなぜ定型発達者が発達障害をもつ主人公に自らを重ねる事ができたのか?それは「定型発達者も発達障害者も突き詰めれば感情を持った同じ人間だからである
part①でも述べたが「定型発達者も発達障害者も脳機能が同じスペクトラム内の中におり、それ(脳機能の偏り)が強いか弱いかだけの問題だからである。人間だれしも「こだわり」があり「自己中心的であり」「他人に合わせるのが苦手であり」「勘違いしてしまったり」「物事を違う意味でとらえてしまったり」「急に不安になってしまたり」「ストレス」を抱えてしまったりするであろう。それは脳機能が同じスペクトラム内の人間同士が持つ感情であるからだ。だから視聴者は「ウ・ヨンウ」に共感でき、自らを重ねるのである。

作品としては素晴らしい要素が満載の本作だが、演じる当の役者としてはとてもハードルの高いものと言えよう。当のウ・ヨンウを演じたパク・ウンビンは当初、主役である本役を務める事に相当悩んで配役を何度か断ったという。それは己が演じる自閉スペクトラム症により誤った認識や解釈、誤解を招きかねないとう考えからである。彼女はこの役(ウ・ヨンウ)を演じるという事は「それ」を乗り越える必要性があったからだという。彼女のインタビューをみているととても聡明で己の考えがしっかりとある役者だということが分かる。

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話は変わるが同じ発達障害者である私が本作品を見てウ・ヨンウと違うリアクションを示すであろうところが15話あたりで上司であるミョンソク(カン・ギヨン)からスンジュン(チェ・デフン)に代わった所だ。新たな上司のスンジュン(チェ・デフン)とウ・ヨンウは馬が合わずヨンウの行うことをことごとく否定するスンジュン(チェ・デフン)にヨンウは困り果ててしまい、しまいには仕事を外されてしまうというシーンである。私であれば注意欠如・多動症(ADHD)もある為、あの手の上司(発達障害者が一番嫌いなタイプ)を相手にした場合は間違いなくキレるであろう。まず怒鳴りあいになることは必定であろう。もしくは出社したくなくなり二次障害が発症する。

ヨンウの同僚であるチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)クォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)も新しい上司で自分勝手なスンジュン(チェ・デフン)には対応に苦慮し意見が分かれるほどである。
どの世の中にもヨンウに味方になってくれるタイプばかりではなく彼のようなタイプはいるのである。ただ、こと発達障害者においてはそういった状況(自分とは合わないタイプでストレスが溜まる人)を「うまくやり過ごす事」はできない性なのである。
もし実在する発達障害者があのまま彼の元で働き続けていたら間違いなく二次障害を発症してしまうことがよういに想像できる。

またpart①でも触れたが、本作はハートフルラブコメディドラマである為、発達障害当事者の感情の内面部分(苦悩や葛藤、絶望など)の深い部分まで掘り下げておらず、発達障害者の中でも稀な「サヴァン症候群」の特異な才能である部分にスポットに目が行きがちである。
冒頭のレインマン然り、それはそれで定型発達者にとって見どころはあるのだが、発達障害者の私が求める映画(ドラマ)とは少し違う。

私が求めるものは当事者である発達障害者側の主観視点で、当事者たちが定型発達者達と接する上で(どのように物事を認識し、それをどのように捉え、そしてどのような発言や行動を起こしてしまう)それによって周りにどのような影響を与え、どのようなトラブルが生ずるかという定型発達者側の視点を第三者視点で織り交ぜながら、発達障害者たちを取り巻く困難をあぶり出すような作品である。

視聴者である定型発達者に我々発達障害者が普段考えている事を理解や共感してもらい、時には定型発達者の行動や言動が当事者である我々発達障害者のストレスとなりトラブルを引き起こしてしまう。そういった側面をもった深みのある作品を期待している。(ただ仮にそのような作品を作れたとしてもマイノリティ向け作品となり、大衆受け(定型発達者受け)はしないと思うが・・・)

いずれにしても本作品を通じて定型発達の人たちが、我々、非定型発達者である発達障害者を決して「障害者」という見方ではなく「~症候群」「~の困難を持つ人」「~のような傾向を持つ人」と理解してもらい、同じ人間を形どる「性格」や「個性」と捉えてもらえれば幸いである。

さてシーズン2が期待される本作だがヨンウの恋人イ・ジュノ(カン・テオ)が兵役から復帰後、我々視聴者も本作の苦労や難しさなどの点からも続編を広い心で気長に待とうではないか。


PS:NETFLIXの韓流ドラマで「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の前に観ていてハマったドラマは「海街チャチャチャ」だが、これはよくある恋愛ドラマの王道である三角関係を途中に差し込んだドラマだ。(日本のドラマなどは観る気が起きなくここ数十年観ていない)
最近自分も歳をとったせいか「ドンパチで人が簡単に殺されるような映画」ではなく、心温まる映画やドラマ観て「心の平静を保ちたい」思う今日この頃である。

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